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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


「土方副長、教えてください。あれはいったい何者なんですか?」
「……あれってのはなんのことだ?」
「……両方です。襲ってきた者も、守っていた白髪の者も」

相馬君の言葉に土方さんは困ったように顔を顰めた。
そして、近藤さんへと視線をなげかける。

「近藤さん。……どうする?」
「ああ……雪村君たちのことを任せたときから、いずれは話さねばならぬと思っていた。それが今になっただけの話だ。……構わん、続けてくれ」
「まずは襲ってきた奴だが……奴は薩摩藩の協力者だ。自らを【鬼】と名乗ってやがる」
「……鬼、だと。確かに、あの強さは鬼と呼んでいいもの……今の俺では、まるで歯が立たなかった。しかしそれより気になるのは、その鬼が先輩たちを狙っていたことです」

相馬君には【鬼】の事は伝えてなかった。
だからかなり驚いたはず……屯所を襲撃してきた者たちが私たちを狙っている事を。

「ああ。正直俺たちもまだ、半信半疑ではあるんだがな……」

ちらりと、土方さんは私と千鶴を見やる。
まるで言葉を促すような視線を受けて、私と千鶴はお互いに顔を見合わせてから、土方さんに軽く頷いて見せた。

ここまで来たら隠す必要はない。
相馬君にきちんと説明しなければいけない、そう思い私と千鶴は彼に説明をする事にした。

「……私と千鶴は、彼らと同じ鬼の一族なの」
「雪村先輩たちが……鬼!?」
「……ただ、私自身は実感はないの。ずっと普通に暮らしてきたし……、急に鬼なんて言われてもわからない。でも……私の体が人とは少し違うのは確かだから……」
「……少し長くなるけど、きちんと説明するね」

私は相馬君に鬼のこと、そして私たちの事を説明した。
もちろん、私が本当は千鶴の双子の妹ではないことや鬼の里の事など全てを。

説明している間、話を聞いていた相馬君はかなり驚いた表情を浮かべていた。
信じられない……と言わんばかりの表情だけど、無理は無い。

「鬼……」
「それから……。おまえと雪村姉を助けたのが【羅刹】だ。鬼とはまた違うが、常人では有り得ない力を持った者だ」
「あの人たちは、味方ですか?」
「味方だとも。表沙汰にはしていないが、山南君が率いる新選組の一部隊という扱いだ」
「それは……表沙汰にできないだけの理由があるということですね」

相馬君の鋭い問いに、土方さんが息を吐いてから彼を睨みつけた。
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