第2章 新選組【共通物語】
「……な、なんと。俺は女子の部屋に、無断で立ち入ってしまったと言うわけか……!」
「あ、いえ。私でしたら大丈夫です。見られて困るものとかありませんし、お部屋の中にどうぞ」
「むむう。トシの小姓と言うからには、トシの隣部屋かと思っていたのだが……」
どうやら近藤さんは、土方さんが私たちを小姓として扱っていないことを知らないようだ。
恐らく、近藤さんは私たちが土方さんの小姓になるという案に賛成していたから伝えにくかったのだろうか…。
何となく、千鶴と二人で事情が飲み込めて苦笑いを浮かべる。
そして千鶴は近藤さんへと困ったような笑みを見せると声をかけた。
「何のお構いもできませんが、どうぞ」
「そうか……では、失礼して、お邪魔させてもらおう。だが、そうしてかしこまらんでくれ。君たちは我ら新選組の客人のようなものだからな」
そう言うと、近藤さんはお盆を置いた。
お盆には金平糖とお茶が入った湯のみが三つ置かれていた。
「これは……」
「おほん。…君たちは甘いものは好きかね?茶菓子の棚に金平糖があったのでな。持ってきたんだ」
色とりどりの可愛らしいお菓子、湯気が立ち昇っている緑茶。
思わず顔が緩んでしまう。
「どうかね、雪村君たち。嫌いではなければ、是非食べてみないか。さて、遠慮は無用だぞ」
「……ありがとうございます」
「ありがとうございます、近藤さん……」
私たちは頭を下げてから金平糖に手を伸ばす。
桃色に白色という可愛らしい色の金平糖を口に含めば、甘い味が口いっぱいに広がった。
「……美味しい。美味しいね、千尋」
「うん……美味しい」
「そうか、気に入ってくれたみたいで何よりだ」
近藤さんはそう言って、私たちを温かい眼差しで眺めていた。
ここに来てからは冷たい眼差し、敵意のある眼差しで見られる事が多かったせいなのか、近藤さんの温かい眼差しに少しだけ心が救われる。
「そういえば……。まだ、外出の許可は出てないそうだな」
「……はい。でも、焦っても皆さんの迷惑になりますし」
「今は土方さんに言われたとおり、もう少し時期を待つつもりです」
「なるほど……分かってくれてうれしい。ああ見えてトシは、昔から他人に世話を焼かないでいられない性分だからな」
少し違和感のある言葉だけど、近藤さんが言うのならそうかもしれない。