第9章 修羅【土方歳三編】
「……わかった。そういうことなら今後も、我々新選組が責任を持って彼女たちの身を預からせてもらおうじゃないか」
私がここに残ると知ったからか、厳しい表情をしていた永倉さんたちは明るく微笑んでいた。
「まあ、大船に乗ったつもりで任せてとけって!」
「新八の船は泥舟だけどな。しかしまあ……良かったな」
「ここに残るなんて、君たちも物好きだね。肝が据わってるのか、単に鈍感なだけなのか……」
「言っておくが、客人扱いする気はねえからな。おまえたちの待遇は今までと同じだ」
「……はい。皆さん、改めてよろしくお願いします」
「よろしく、お願いします」
こうして私たちはこれまで通り、新選組にて過ごす事となった。
最初はどうなるかと思ったけれども、ここを去らずに済んだことに少しだけ安堵する。
すると、お千ちゃんは私と千鶴に微笑みながら近付いてきた。
そして私たちの手を取ってから優しく握る。
「千鶴ちゃん、千尋ちゃん、くれぐれも気をつけてね。私はいつでも貴方たちの見方だから」
「ありがとう……、お千ちゃん」
「本当に、ありがとう」
味方という言葉はすごく安心できるものであり、私は心から安堵する。
そして、お千ちゃんと君菊さんは屯所を去っていき、私と千鶴はそんな彼女たちを見送った。
お千ちゃんと君菊さんを見送った後、私と千鶴は広間へと戻ってきた。
そして座ったのと同時に沖田さんが声をかけてくる。
「ねえ、千尋ちゃん。君に聞きたいことがあるんだけど」
「はい?」
「君は、人間を恨んだりしてないの?千鶴ちゃんは当時のことを覚えてないからあれだけど、君は目の前で両親を里を滅ぼされたことを覚えているでしょ」
「おい、総司……」
沖田さんの言葉に、原田さんたちは眉間に皺を寄せて制しようとした。
だけど私は目を少しだけ細めながら口を開く。
「最初は恨んでいました。人間の身勝手な理由で両親を殺され、親族を殺され里を滅ぼされた。何度も人間を同じように殺してやりたいとも思いましたよ」
「……千尋」
横にいた千鶴が私の言葉に目を見開かせている。
でも、人間に恨みを抱いていたのは事実であり、最初は憎悪も激しく殺意も抱いていた。
人間の身勝手な理由、そして汚いほどの欲の為に里は滅ぼされてしまったのだから。