第9章 修羅【土方歳三編】
彼女の瞳は真剣だった。
それに私たちの身を案じてくれているようで、その気持ちは本当に嬉しい。
だけど、私は新選組から離れたくなかった……千鶴を守るのに苦労するかもしれないけれども。
「ありがとう、お千ちゃん。でも……」
千鶴もどうやら新選組から離れたくないようだ。
そんな私たちの気持ちを察したのか、お千ちゃんは少し困ったような表情をしなから尋ねてきた。
「もしかして……二人とも、ここから離れたくない理由でもあるの?」
「……うん」
「そうなの……」
「……誰か、心に想う人がいるとか?」
「「え!?」」
お千ちゃんの言葉に、私たちは目を見開かせてしまう。
だけど彼女の問いかけは真剣そのもので、揶揄うような調子は微塵もなかった。
彼女は真剣に私たちに問いかけている。
なら、私も真剣に正直に話すべきなんだろう。
「うん、実は……」
「私も、実は……」
どうやら、千鶴も私と同じだったらしい。
私たちはお互いの顔を見てから苦笑を浮かべて、すぐにお千ちゃんに向きなおった。
彼女は私たちの表情に少しだけ驚いた表情をしていた。
お千ちゃんは目を見開かせていたけれども、直ぐに口元を緩める。
「……そっか。それが誰なのかまでは聞かないけど……。あなた達が一人の女の子として見つけたものが、ここにあるのね。……それなら、離れろなんて言える筈ないか」
そうして、私たちは話し合いを終えて広間へと戻ることにした。
「……お待たせしました」
「長く、お待たせしてしまい申し訳ありません」
広間に戻ると、幹部の方々は少しだけ難しい表情をしていて、君菊さんは少しだけ厳しい表情をしていた。
すると近藤さんが私たちへと声をかけてくる。
「どうだった?結論は出たかな」
私と千鶴が、その結論を答えようとした時だ。
傍にいたお千ちゃんが私たちよりも先に、一歩前に進み出た。
「はい。彼女たちのことを、これまで通りよろしくお願いします」
「お千ちゃん……」
「姫様……よろしいですのか、本当に?」
「ええ、もう決めたことだから。今は、彼女たちの意思を優先しましょう」
お千ちゃんは私たちの意思を尊重してくれた。
そのことを嬉しく思っていれば、近藤さんは朗らかに微笑んでから小さく頷く。