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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第9章 修羅【土方歳三編】


お千ちゃんは私たちの言葉に、嬉しげに微笑んでみせた。
その微笑みはさっきまでのお姫様という雰囲気ではなく、年相応の女の子の雰囲気を纏っている。

そして、私たちは千鶴の部屋で話をする事となった。
もちろん三人だけであり、土方さんたちは広間で話し合いが終わるまで待ってくれている。

「……突然押しかけられた上、色々なことを言われて、混乱したでしょう?特に、千鶴ちゃんは……。……ごめんなさいね。本来なら、こんなやり方はしないんだけど」
「ううん、大丈夫」
「私たちを思ってくれての行動だったんでしょう?ありがとう、お千ちゃん」
「それに、こっちこそ、さっきは皆さん方が失礼な事を言ってしまって……ごめんなさい」
「まあ、あれぐらいは予想はしてたから」

三人だけになると、お千ちゃんの雰囲気は町で会った時のものになっていた。

「いきなりあんな話を信用しろって方が無茶だもんね。鬼と呼ばれる生き物が本当に存在してる、なんて簡単に信じられる人間は、そうそういないし」

多くの人間は、【鬼】というのは空想の生き物だと思っている。
しかも想像しているのは、絵物語に出てくる赤鬼や青鬼のような鬼であり、人間と同じ姿形をしているとは思っていないから。

「それよりも……さっきの提案、どうかな?ちゃんと、考えてみてくれる?」
「ここを出て、千鶴と共にお千ちゃんの元に身を寄せる……っていう提案だよね」
「そうよ」

もし、京に来たばかりの時にお千ちゃんと会っていたら、間違いなく私は彼女を頼っていた。
同族なら安心だし、千鶴を守ることもちゃんと出来るから。

「新選組の人たちは、あなた達を守れると言っていたけど……私は無理だと思う」

私もそれは否定はしない。
鬼と人の力の差はかなりあり、しかも風間千景は純血の鬼だ。
普通の鬼よりも遥かに強い力をもっているし、本気を出せば新選組の方たちは簡単に滅んでしまう。

「今後、京の政局はますます混乱する筈よ。そんな時に、風間がやってきたら……どうなると思う?あなた達は新選組から離れるべきだわ。そうすれば、彼らも心おきなく戦える」
「お千ちゃん……」
「それに、千尋ちゃんはこちら側に来た方が安心すると思うわ。千鶴ちゃんも守りやすいし、心身共にも安心するはずよ」
「……心身共に」
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