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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第8章 軋み【土方歳三編】


だけど、笑い飛ばしながらも驚きと悲しさや寂しさが瞳に滲んでいた。
事実だと受け入れたくなかったのだと思う。

「おいおい、未練がましいこと言ってんじゃねえぞ、小僧ども。本人が出てくっつってんだから、てめえらが文句をつける筋合いはねえだろうが」
「……いや、文句をつけていたわけではない」
「あら、文句じゃなかったのね。そもそも、【隊を脱する】という言い方が、良くないわね。あくまでも私たちは分派するだけでしてよ。古巣である新選組への敬意は変わりませんもの」

土方さんや原田さん達が居たら、『態とらしい』と悪態をつきそうな言葉だった。
すると三木さんは相馬君たちを見ると笑みを浮かべる。

「まあ、斎藤と東堂の二人はおまえらより賢明だったってことだ。ここに残るよりもうちの兄貴についてったほうが、何倍も得ってわかってるんだからな!」

あからさまな三木さんの挑発に、相馬君たちは歯を強く噛み締めていた。
一触即発とも言える空気を制したのは、それまで静かに話を聞いていた斎藤さんだった。

「損得の問題ではない。俺は伊東さんの考えに共鳴したからこそついていくだけだ」
「オレもそうだ。別に新選組から離れたかったわけじゃねえよ。……ただ、これでもいろいろ考えた上で選んだ道なんだ」
「平助君……」

その言葉に私たちは何も言えなくなった。
重苦しい沈黙が流れる中、伊東さんはそんな空気を気にする様子もなく肩をすくめてから背を向ける。

「さて、私もこれから忙しくなるし、名残惜しいけどお先にお暇しようかしら。それじゃ行くわよ、三郎。東堂君たちも程々にしていらっしゃい。」
「ああ……っと、その前に」

三木さんは何かを思い出したような表情をすると、私と千鶴へと切れ目長い瞳を向けてきた。
すると相馬君が千鶴を庇うように、野村君は私を庇うように立つ。
だが、そんな彼らを気にする事はなく三木さんはにやりと笑った。

「雪村千鶴、雪村千尋。結局、おまえ達の秘密を暴けなかったのが残念だぜ」
「……なんのことですか」
「三木さんが何を言いたいのかさっぱり分かりませんね」
「知らばっくれるんじゃねえよ。まあ、もうこうなった以上はどうでもいい。今更新選組の弱みを握るも何もねえ。何を隠してるか知らねえが、せいぜい気をつけるがいいさ」
「何を、言いたいか本当に分かりませんね」
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