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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第8章 軋み【土方歳三編】


「伊東さん、今どこに居るんだろう……」

お部屋か広間、それともよく伊東さん達が勉強会で使っている部屋。
どれだろうと思いながら伊東さんの姿を探しながら、広間の前を通りがかった時だった。

「平助と斎藤君は、伊東さんと共に新選組を脱退する事になった」
「……え!?」

広間から聞こえた驚愕してしまう近藤さんの言葉に、思わず大きな声を出してしまった。
すると閉められていたふすまは勢いよく開き、中からは驚いた表情をした井上さんが立っていた。

井上さんは私の顔を見ると複雑そうな、なんとも言えない表情を浮かべる。
そんな井上さんの顔を見ながら広間へと視線を移すと、中には幹部の方々がいた。

「雪村君!起きて大丈夫なのか?」
「は、はい……ご心配をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした」
「いや、大丈夫なら良かった」

近藤さんは眉を下げたまま笑みを浮かべていた。
すると、広間から『あら』と伊東さんが声を弾ませながら、私へと視線を向ける。

「雪村君、おはようございます。昨日は急に意識を失ったので心配しましたよ」
「……ご心配をおかけしました」

伊東さんの横には、先程近藤さんが『伊東さんと共に新選組を脱退する』と言っていた平助君と斎藤さんの姿があった。
平助君は、私を見るなり気まずそうに視線を逸らしている。

「あの……さっきの話」
「実はですね、この伊東。同志と共にここを出て、孝明天皇の御陵衛士を拝命する所存ですの」
「……御陵衛士」
「ええ。以前から考えてたことだけど、あんな場面を見せられた以上は、ここで一緒にやっていくのは無理と思いましてね。私は、元々は尊皇攘夷の志を持って新選組に協力していたつもりだけど、どうもここの方達とは水が合わないですから」

上品に笑いながら伊東さんは説明をしてくれた。
夜明け前に、土方さんから脱退するとは聞いていたけれども、まさか新しい組織を作るなんて思っていなかった。
しかも、平助君と斎藤さんも一緒に行くなんて……。

「それでなんですけど……。雪村君、貴方も一緒に来ませんこと?」
「……え?」
「な!あんた、平助と斎藤を連れていくのに、千尋まで連れていくつもりかよ!」

伊東さんの言葉に驚いたのは私だけじゃなかった。
原田さんは目を見開かせて言葉を荒らげさせ、他の隊士の方も驚いた顔をしている。
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