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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第8章 軋み【土方歳三編】


「伊東には説明をした。山南さんの事も羅刹の事も」
「……話したんですか?」
「隠すのにも無理があったからな。それに、殺して口封じしても伊東一派とかが面倒くせえからな。だが、それ以上に面倒くせえ事になったがな」
「それ以上に……?」

何があったのだろうと思いながらも、なんだか嫌な予感がした。
胸がざわつくような、そんな不快な物が押し寄せて来ていれば土方さんはため息をはいてから口を開く。

「伊東は新選組を出ていくんだとよ」
「……え!?」
「三年もの間、自分を謀ったような組織には居られねえんだとよ」
「そんな……」

まさかの言葉に驚愕してしまった。
伊東さんが新選組を出ていくとは思ってもいなかったけど、それほど許せなかったのかもしれない。
長年ずっと知らされる事も無かったことに対して。

「伊東だけじゃなくて、伊東一派も出ていく事になるんだろうよ。ま、詳しい話は夜が明けてからだな」
「そうですか……」
「……お前は部屋に戻って、夜が明けるまで大人しくしてろ。寝ろとは言わねえが、横になるぐらいはしておけ」
「はい」

それだけを言うと土方さんは立ち上がり、そのまま広間の方へと歩いて行ってしまった。
伊東さんの脱退、そして伊東一派の脱退は恐らくだけど新選組には多少の影響は起きるはず。

だけど、なんだろう……。
伊東さんの脱退を聞いてから更に、私の胸は嫌な予感でざわついていた。
そんな不快にも近いざわつきを感じながらも、私は土方さんの部屋へと入ったのだった。

❈*❈*❈

夜明けが過ぎ、朝日が上り辺りが明るくなった頃。
私は未だに眠る千鶴を見ながら、襦袢から何時もの着物へと着替えた。

「……千鶴は、寝かせておこう」

昨夜は羅刹に襲われたりと、色んな事があったのだからまだゆっくりと寝かせようと思い、起こさないように静かに部屋を出た。

今日は炊事当番。
私はあんな事があった後のせいで食欲は無いけれども、他の隊士さん達は食べるからと自分用以外の食事を作る為に、勝手場へと向かった。

「……あ、伊東さんはどうするんだろう」

新選組を去ると言っても、今日じゃないかもしれないから必要かもしれない。
でも、もし今日の朝に新選組を去るのなら作っても無駄になるかもしれない……そう悩みながら私は伊東さんに聞く為に、私は勝手場から出ると廊下を歩き始めた。
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