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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第8章 軋み【土方歳三編】


縁台に座りながら手のひらを見た。
千鶴が綺麗にしてくれたのか、手のひらに着いていた血は消えていて襦袢も新しい物になっている。
血は消えているけれども、あの人を斬った感触を忘れられずにいた。

身体が僅かに震える。
人を斬ってしまった恐怖心は凄まじく、身体の震えが止められなかった。
手のひらを見つめながら唇を噛み締めていた時だ。

「もう起きて大丈夫なのか?」
「……土方さん」

声をかけられて振り返ると、少しだけ疲れた表情を浮かべた土方さんが立っていた。

「急に倒れるもんだから驚いたぜ」
「すみません、ご迷惑をおかけしてしまって……」

申し訳なくなって謝罪をすると、隣に土方さんは無言で来ると縁側に腰掛けた。

「原田達から聞いた。お前、血が苦手なんだってな」
「……はい」
「だが、その身体の震えはただ血を見たからという訳じゃねえな……」
「……千鶴を、守る為とはいえ人を斬ってしまった事が怖くなったんです」

もう人では無いとはいえ、彼は元は人間だった。
そんな人を私は斬ってしまった事が怖くて、身体の震えは止まるところか、思い出したせいで酷くなっていく。

「なさけない、ですよね……。千鶴を守るって決めた時に、もしかしたら人を斬るかもしれないって覚悟はしていたんです。でも……」
「人を斬って普通で居られる方が、おかしいんだ」
「……え」
「俺や、新選組の奴らはもう人を斬る事に慣れちまってる。そんな俺達が異常であって、お前の反応が普通なんだ。だから気にする必要はねえ。それにお前が斬ったのは【人】じゃねえ。あれは【羅刹】だ……だから気にしなくていい」

土方さんはそう呟きながら、白みだした空を見上げていた。
彼の言葉はぶっきらぼうだけど、人を斬った事に震えている私を落ち着かせようとしくれる優しがある。

「……ありがとうございます、土方さん」
「礼を言われるような事はしてねえよ。それより、さっきも聞いたが起きてて大丈夫なのか?お前」
「はい。それに、今はもう寝れる気分じゃないですから……」
「ま、もうすぐ夜明けだからな」
「……あの、土方さん。伊東さんはどうなりましたか?」

伊東さんは羅刹の死体を見てしまった。
それに、山南さんまで見てしまったのだが彼はどうなったのだろう。
そう思って土方さんに聞けば、彼は僅かに苦い表情を浮かべていた。
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