第8章 軋み【土方歳三編】
ー数日後ー
私と千鶴は近藤さんに話がある、そう言われて朝食の片付けが終わるとすぐに広間へと向かった。
何やら私たちに話があるとのことで、私と千鶴は【どんな話があるのだろう】と不思議に思いながらも、広間に向かう。
「近藤さん、雪村です」
「ああ、入ってくれたまえ」
「失礼します」
「失礼します」
広間に入れば、私たちの事情を知っている幹部の方々と相馬君に野村君がいた。
何の話があるんだろうと、少しだけ緊張しながら座ると近藤さんはにこやかに笑う。
「実はな、君たち二人には宴会の時、助けてもらったから褒美をあげたいと思ってな」
「褒美、ですか……?」
「ああ!」
まさか、宴会の事でご褒美をもらえるなんて。
少しだけ驚いていれば、近藤さんは相変わらずの朗らかな笑みを浮かべたまま、言葉を続けた。
「宴会の際に久しぶりに女性の格好をしたとは言え、男に酌をさせるというのをさせてしまったからな。流石にそれは申し訳ないと思ってな。だから、君たち二人は今日一日、女性の格好で出掛けてもらい、気分転換をしてもらおうと思っている!」
「女性の格好で……」
「出掛ける……」
近藤さんの言葉に、私と千鶴は思わず目を見開かせた。
確かに、久しぶりの女性の格好をしたけれどもそれはお酌をする為だけ。
でも、お酌をすると決めたのは私と千鶴だからと思っていれば、原田さんが声をかけてきた。
「良いんじゃねえか?特に、千尋はあの時嫌な思いしたんだから、綺麗な格好して出かけて気分転換してきたらいいと思うぜ」
「確かにな!久しぶりに女の格好したのに、それが爺さんや俺らの酌するだけっていうのもなんか嫌だろ?」
「……良いんですか?その、私たちが女の格好をして京の町を歩いていて……。事情を知らない隊士さんに見られたりしたら」
もし、見られたら大変な事になってしまう。
まだ一般隊士の方なら誤魔化しようはあるけれど、もし三木さんに見つかれば大変な事になるかもしれない。
あの人は、私と千鶴を女かもしれないと疑っているのだから。
「そこは、安心してくれ。今日、巡察がない場所に向かってもらうつもりだからな。それと、もし君たちが浪士達に絡まれないように、幹部達を一人ずつ共にしてもらおうと思っているが……。誰がいいかな?トシ」
「非番の幹部で良いだろう。今日は原田とかが非番だろう?」