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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第8章 軋み【土方歳三編】


「いやいや、土方さんよ。かなり気になるんだが……どういうことだ?」
「千尋が土方さんの女って……。土方さん!あんた、いつ千尋に手を出したんだよ!?」
「ゆ、雪村先輩が土方副長の良い人!?」
「え!?千尋、何時から土方さんと!?」
「千尋ちゃんが……トシさんと……!?」

沖田さんと原田さんは楽しそうにニヤニヤと笑みを浮かべ、平助君と相馬君に八郎お兄さんと千鶴は私が土方さんの良い人だと完全に信じているようで驚いた顔をしていた。
そんな彼らを見て、土方さんは更に大きく舌打ちをする。

「あの人が!雪村妹に執拗いぐらいに近寄って、妾にするなんざ言いやがったから嘘を吐いただけだ!それぐらい分かるだろうが!!」
「へえ〜?千尋ちゃんを守るために嘘を言ったわけですか〜?でも、他にもっと良い嘘があったんじゃないですか?彼女には他に許嫁いるとか言えばいいのに、わざわざ自分の女って言うなんて」
「……総司、テメエ……」

土方さんは顔を引き攣らせなが、沖田さんを睨みつけているが、沖田さんは怖がる訳でも無く楽しそうに笑っていた。

「テメエら、さっさと広間に戻って片付けをしやがれ!!」
「はいはい。あ、千尋ちゃん。土方さんに手篭めにされないように気をつけてね」
「え!?」
「総司!!余計な事を言う暇あるなら、さっさと広間に戻りやがれ!!」
「はーい」

沖田さんはニヤニヤしながらも、足早に広間の方へと向かっていった。
そして他の幹部の方々や千鶴に相馬君はニヤついてたり、複雑そうな顔をしながらも、沖田さんの後を追うように歩いていく。

幹部の方々が居なくなり、その場には土方さんと近藤さんと私だけが残った。
少しだけ、気まずくて私も直ぐに広間に行こうと思い、二人に声をかける。

「私も広間に戻りますね」
「ああ。雪村君、今日は助かった。そして申し訳なかった」
「え?」
「嫌な思いをさせてしまったと思ってね」

近藤さんはとても申し訳なさそうにしていた。
別に、近藤さんのせいではないのにと私は思わず苦笑を浮かべる。

「近藤さんのせいではないなので、謝らないでください。それに、皆さんのお役に立てて良かったです」
「……君は、本当に心根が優しい子だな。本当に助かった、ありがとう」

嫌な思いはしたけれども、お役に立てて本当に良かった。
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