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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第8章 軋み【土方歳三編】


「……悪かった」

短い謝罪に私は勢いよく顔を上げてから、左右に頭を振ってから、羞恥心で震えた声を出した。

「い、いえ。助けていただき……ありがとうございました」
「……雪村。もうなるべくあの男には近付くな。お前、かなり気に入られてるからな。次は何をして、何を言うか分かったもんじゃねえ」

土方さんは不機嫌そうな表情をしながら、広間の方へと視線を向けていた。
私も釣られて広間の方へと視線を向けながら、土方さんの言う通りにしようと決めた。

また、ああやって触られるのは嫌だ。
それにまた【妾にならないか】なんて言われるのは、あまりいい気分にはならない。

「雪村。嘘も方便なんて言うが、こんな男の女だなんて言って悪かったな」
「え?」
「こんな鬼副長と言われて、お前を軟禁している男の女なんざ、嫌だろう?悪かったな」
「そ、そんな……!嫌だなんて思っていませんから!」
「無理するんじゃねえよ。……勝手場に行くんだろう?あの人がまた来ねえとは限らねえから、着いて行ってやる」
「……ありがとう、ございます」

嫌だなんて思わなかった。
恥ずかしいとか、色んな感情はあったけど、その中に嫌だという感情はない。
なんで、嫌じゃなかったんだろうと思いながら、私は土方さんと共に勝手場へと向うのだった。


そして、宴会が終わった。
友平様はかなり酔われて、迎えの駕籠が来ていて、八郎お兄さんが支えながら駕籠に乗せていた。
私たちはそんな彼を見送る為、新選組の屯所の入口にいた。

「それでは友平様、道中お気をつけてお帰りください」

近藤さんは笑顔でそう言うと、友平様は視線をうろつかせながら私を見てから笑った。

「いやはや、楽しい宴会だった。それに、まさかあの新選組の鬼副長に女がいるとはなあ……」
「……トシに、女?」
「そこにいる千尋殿を、妾にしたいと言うと、睨まれて自分の女だと言われてしまったよ!ははは!ではな!」

楽しそうに笑いながら、友平様は【頼む】と駕籠者の人に言うと、友平様が乗った駕籠は新選組の屯所から去っていく。
そして、土方さんは舌打ちをしながら【余計なことを言いやがって】と苦虫を噛み潰したような顔をされた。

「ねえ、土方さん。あの友平って人が凄く面白い事言ってたんですけど」
「聞くんじゃねえ!!」
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