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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第8章 軋み【土方歳三編】


「相馬の奴、千鶴に酌してもらって顔真っ赤にしてやがるぜ」

原田さんの言う通り、相馬君は顔を真っ赤にさせていて、手に持っているお猪口が少しだけ震えていた。
彼の傍には千鶴がいて、相馬君にお酌をしているけれども、微かに千鶴の頬も赤い。

「……へえ」
「千尋、千尋。目が怖い、目が怖い」
「本当に、千尋ちゃんは千鶴ちゃんに過保護だよなあ。恋仲の男が現れたら大変そうだな」
「確かにな。そんなに千鶴に男が近付くの嫌なのか?」
「……正直言ったら嫌です。でも」

千鶴を大切にしてくれる人なら、別に構わないかもしれない。
相馬君はあの夜、三木さんが千鶴に絡んだ時には直ぐに助けてくれた。
それにあれ以来から相馬君は常に千鶴を守ろうとしてくれているけれどもーー。

(それでも、千鶴が男性に取られると考えたら嫌なんだよね……)

こういう考えもそろそろ辞めなきゃいけないかもそれない。
そう思いながら思わずため息を吐いてしまった。

そして、宴会が始まってから数刻が経った頃。
銚子が無くなったので、勝手場にある新しい銚子を取りに行っていた。

「はあ……」

勝手場へと向かう道中、私は何回目になるか分からないため息を吐く。
あれから友平様は何かと私を呼びつけ、お酌をさせては私の手を触ったり至近距離に顔を近付けたりとしていた。

「……新選組の皆さんの為にって、お酌のお仕事を引き受けたけど……。ちょっと疲れたなあ」

そう呟いていた時だ。
肩を誰かに叩かれて、慌てて振り替えった。

「と、友平様……。どうされたんですか?こんな所で……」
「厠へと行っていてね。偶然君を見つけたんだよ」
「そ、そうなのですね……」

後ろに立っていたのは友平様。
相変わらず、瞳には色欲が滲んでいて、私はその目を見た瞬間背筋が冷たくなったのを感じた。
そんな時、友平様は私の手を取りながら笑みを深めていく。

「本当に君は、妻に良く似ているなあ」
「……そ、そうなのですね」
「どうだ?私の妾にならんか?」
「……めっ、妾っ!?」

突然の言葉に思わず叫んでしまった。
まさか【妾にならないか】なんて言われるとは思ってはいなくて、私は目を見開かせてしまう。

「ご、ご冗談を……」
「冗談ではない。大事にするぞ?好きな着物や化粧やなんでも買い与えてやるから、妾になっておくれ」
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