第8章 軋み【土方歳三編】
千鶴と私の着物は桜柄であり、桜の花びらが散らばっていて美しいものであり、私たちは身にまとってから息を飲んでしまう。
この着物は絶対に汚したり、傷付けたりしてはいけないぐら高いはずだから。
「……とりあえず、汚さないようにしなきゃ」
「うん。あ……千尋、髪型変えよう。折角だから」
「そう、だね……。高く結い上げなくてもいいものね」
私は、首元で髪の毛を結ってから肩へと流すようにして千鶴は三つ編みしてから一つ結びをした。
久しぶりに女性物の着物を身にまとい、女性らしい髪型もしたので不思議な気分になる。
(……久しぶりだから、ちょっと違和感もあるかも)
そう思いながら、私たちは部屋のふすまを開けてから周りに事情を知らない隊士さん方が居ないかを確認してから広間へと向かった。
広間からは幹部の方々の声がする。
私はゆっくりと近付いてから声をかけた。
「あの、お待たせしてすいません……着替えてきました」
声をかけてからふすまを開けて、広間へと入れば幹部の方や八郎お兄さんは水を打ったように静まり返る。
そんな彼らを見て、私たちは戸惑ってしまった。
「……あ、あの……?」
「も、もしかして変でしたか?久しぶりに女の格好をしたから、どこかおかしな所でも……!?」
何も言ってこない幹部の方々に、千鶴と不安を抱いてしまう。
すると、近藤さんははっ……とした表情になってから慌てて口を開いた。
「いやいや!変ではないとも!二人がとても美しいものだから、つい言葉を失ってしまった」
「おやおや……本当に綺麗だねえ。千鶴君、千尋君、とても素敵だよ」
「……驚きました。久しぶりに千鶴ちゃんと千尋ちゃんの女性物の着物を身にまとった所を見ましたが……本当に美しい女性になりましたね、二人とも」
「……まじか。まるっきり別人じゃねえか」
「綺麗だぜ、二人とも。よく似合ってる」
「馬子にも衣装かな?でも、別に変じゃないよ」
「おい、総司!そこは素直に褒めろよな!!き、き、きれい、綺麗だぜ!二人とも!な、なあ!一君」
「う、うむ……」
一斉に幹部の方々は褒めてくださり、私と千鶴は思わず照れてしまった。
だけど、土方さんは何も言わずに直ぐにそっぽを向いている。
「……土方さん。土方さんも、ちゃんと二人の姿を褒めてあげなきゃ駄目ですよー?」