第8章 軋み【土方歳三編】
「俺らに興味なあ……。なんで興味を持ったんだ?」
「池田屋事件や禁門の変、そして二条城で警護にあたった新選組の皆さんが、どのような人たちなのか興味があると……」
「なるほど!興味を持っていただけるのは嬉しいな!」
近藤さんは本当に嬉しげにしている。
幕府の方に興味を持っていただけるというのは、良い事かもしれない。
「酒を酌み交わしたいと言っても、どこでするつもりなんだ?島原か、それとも高級旅館か……」
「あ、それが……。新選組の屯所で宴会をしたいと言っていまして。しかも、明日には伺いたいと……」
「……はあ!?新選組で宴会開きたくて、明日来る!?」
「……すみません、トシさんっ!!」
八郎お兄さんの話だと、同じ奥詰の方は新選組に大変興味があり、是非屯所で宴会をしたいと言う事。
その言葉に土方さんは面倒くさそうに眉間に皺を寄せていて、近藤さんは【出迎える為の準備をしなければ!】と張り切っていた。
それからーー
近藤さんと土方さんは、幕府の方を出迎える為にと屯所の掃除を隊士の方々に命じた。
そして私と千鶴に井上さんは、お料理を作る為にどんな物が良いかと頭を悩ませる。
「どのような食事が良いんでしょうか……。幕府の奥詰の方なら、下手な料理は出せませんし」
「普段の料理は出せませんよね……」
「そうだねえ……。どうしようかねえ」
八郎お兄さんに、その方の好みなどを聞きながら私たちはお出しする料理を決めていった。
ー宴会当日ー
あっという間に宴会当日になり、近藤さんは少しそわそわとしていた。
そして、伊東さん達は最初は宴会にご出席されると話していたが、【当日、要件が入りましたのでご遠慮しておきますわ】とだけ言い、朝から居ない状態。
「近藤さん、残念がってたなあ…」
折角なら幹部全員で出迎えたかったらしいが、伊東さん達がいないので残念がっていた。
でも土方さんは【めんどくさい奴らがいなくて楽だ。たださえめんどくさい客人が来るんだから】と疲れた顔をされて言われていた。
「井上さん。お酒も届きました」
「ああ、ありがとうね。そろそろ時間だから、広間に運ぼうか。私は千鶴君と盛り付けしておくから、千尋君、持って行ってくれるかな?」
「分かりました。では、広間に持っていきますね」
酒屋から届けてもらったお酒を広間へと運んでいる時だった。