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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第8章 軋み【土方歳三編】


ー慶応二年・十一月ー


境内の木々が黄金色へと色を変え、落ち葉が多く落ち始めてきた季節。
私は境内で掃き掃除をしながら、時折吹いてくる冷たくなった風に身震いをした。

初めて京に来た時も思ったけれど、江戸より京はかなり寒い。
十二月になれば、今よりももっと寒くなってしまうので驚いてしまう。

「……寒くなってきたなあ」
「そうですね、風邪をひかないようにしてくださいね」
「…………わあっ!?」

突然声が聞こえてきて振り向けば、いつの間にか後ろに人が立っていて驚いてしまった。
そして、後ろに立っていたのは私が知っている人。

「は、八郎お兄さん!」
「お久しぶりです、千尋ちゃん。お元気でしたか?」
「はい……!八郎お兄さんもお元気でしたか?」

そこに居たの八郎お兄さんであり、思わぬ訪問人に私は驚いたけれども直ぐに笑顔になってしまった。
久しぶりに会った幼なじみの八郎お兄さんは、変わらず優しい笑顔を浮かべている。

「ふふ、僕も元気ですよ」
「それは良かったです……。あの、新選組の屯所に来たっていう事は、土方さん達に御用が?」
「はい、実はそうなんです。トシさんと近藤さんはいらっしゃいますか?」
「はい。あ、呼んできますので中にどうぞ」

八郎お兄さんを中に案内しながら、私は土方さんと近藤さんを呼んだ。
それから、彼らは広間へと移動して、私は千鶴と共にお茶の用意をした。

お茶を煎れ終えた後、千鶴と共に広間に向かえば賑やかな声が聞こえてきた。
どうやら、八郎お兄さんが来たのを知って幹部の方々が集まってるらしい。

「お待たせしました。お茶をどうぞ」
「ありがとうございます」
「おう、ありがとうな」

お茶を出せば、八郎お兄さんは口を付けながらほっ……と息を漏らした。

「で、八郎。今日はどうしたんだ?ただ、訪ねに来た訳じゃねえだろ?」
「はい。実は僕の上司が新選組の皆さんに大変ご興味があるようで……」
「む?君の上司となる方は、奥詰の方かな?」
「はい。それで、その方が是非皆さんと酒を酌み交わしたいと仰っていまして。僕が新選組と交流があるといいましたら、提案してきてほしいと」

八郎お兄さんの言葉に、近藤さんは驚いたような表情を浮かべていた。
だが、土方さんは少しだけ難しいお顔をされている。
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