第1章 始まり【共通物語】
私たちが頷くと、山南さん笑みを浮かべる。
「それに……彼女たちが手中にあるというのは、何かと都合がいいと思います」
「ふむ……どうだ、トシ。山南君の意見に俺は賛成だが」
「こいつらが本当に何も知らねえっていうんなら……」
「本当です!私たちは父が京に向かって……。何をしていたかまでは知りません!それに昨夜のことも……私たちは、何も見ていません!」
「……まあ、あの蘭方医の娘たちとなりゃあ、殺しちまうわけにもいかねえか」
面倒くさそうな口調でそう言う土方さんは、私たちを見据えてきた。
その目はあの昨晩とはまた違う鋭く、冷たい目で思わず息を飲んでしまう。
「……昨夜の件は忘れるって言うんなら、父親が見つかるまでおまえ達を保護してやる」
「うむ。君の父上を見つけるためならば、我ら新選組は協力は惜しまんとも!」
「あ……、ありがとうございます!」
「ありがとう、ございます……!」
一時はどうなるかと思っていたけれど、いい具合に事が進んだようだ。
保護というならば、私たちは殺されないのだろう……つまり助かったらしい。
それに何より、この土地に来てようやく父様の手がかりが掴めた事が嬉しい。
私と千鶴はお互いの顔を見合うと、思わず微笑み合ってしまった。
「殺されずに済んで良かったね。……とりあえずは、だけど」
「はい……良かったです」
沖田さんの『とりあえず』という言葉はひっかかるが、確かにそうだ。
今はとりあえず殺されずに済んでいるのだから。
「千鶴君、千尋君、良かったね。これからはよろしく頼むよ」
「はい。こちらこそよろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
「なあ、源さん。女子となれば、ここのような男所帯では申し訳ない気がするんだが……」
「ええ。そうですねえ。これはちょっと困りましたな……」
近藤さんと井上さんは困った表情で考え込みだした。
確かに、新選組は男所帯と聞くし、私たち女がここに居るというのは何かと色々困るだろう。
私たちにとっても、彼らにとっても。
「不便があれば言うといい。その都度、可能な範囲で対処しよう」
「……ありがとうございます」
「ま、まあ、女の子となりゃあ、手厚く持てなさんといかんよなあ!」
「新八っつぁん、女の子に弱いもんなあ……。でも、だからって手のひら返すの早すぎ」