第1章 始まり【共通物語】
「いいじゃねえか。これで屯所が華やかになると思えば、新八に限らず、はしゃぎたくもなるだろ」
華やかになるだろうか…?と千鶴と共に首を傾げる。
だが、山南さんは原田さんの言葉に困ったような表情を浮かべて、私達を見ていた。
「とはいえ、ここでは女性として扱うのは難しそうです。隊士として扱うのもまた問題ですし、彼女たちの処遇は少し考えなければなりませんね」
「なら、誰かの小姓にすりゃいいだろ?近藤さんとか山南さんとかーー」
小姓といえば、主君の近くで雑務をこなしたり命を懸けて警護をしたりする役職。
そんな役割を私たちが出来るのかと思いながらも、隊士としては無理だし幹部の人達に傍にいれるなら小姓の方が良いのかもしれない。
私と千鶴は誰の小姓になるだろうーー。
そう思っていれば、沖田さんが含みのある笑みを浮かべながら土方さんを見ていた。
「やだなあ、土方さん。そういうときは、言いだしっぺが責任取らなくちゃ」
「ああ、そうだな。トシのそばなら安心だ!」
「そういうことで土方君。彼女たちのこと、よろしくお願いしますね」
「……てめぇら、勝手に決めてるんじゃねえ!だいたい、二人も小姓にできるか!」
「いいじゃないですが、小姓が二人いる人なんてかなりいますよ〜」
そんなやりとりを見ていると、なんだか不安になってくる。
不安に思っているのはどうやら私だけではいようで、千鶴もどうやら不安らしく、お互いの顔を見合わせて眉を下げた。
ともかく、こうして私と千鶴はこの新選組にお世話になる事が決まったのであった。
「そういえばさ、千尋ちゃんだっけ?この子面白いんだよ。さっき部屋から逃げ出そうとして、僕たちに見つかった時に土方さんに肘で攻撃しようとしたんだから」
「まじか!よりによって土方さんを攻撃するだなんてすげぇな」
「それに、千尋ちゃんさ。さっきから千鶴ちゃんを庇ってばかりで……まるで番犬みたいだね」
その言葉に私は否定出来なかった。
だって私は、千鶴の番犬のようなものなのだから。
だから今も、これからも私は千鶴を守っていく。
新選組から……この人たちから千鶴を必ず守らなければーー