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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第7章 混沌【土方歳三編】


「はい……」
「楽しんでおきます……」

食事を楽しみながら、辺りに視線を向けている時だった。
ふと、土方さんの方へと視線を向ければ、彼の隣には君菊さんが座ってお酌をしている。

「新選組の土方はんって、鬼のような方と聞いてましたけど……。何や、役者みたいなええ男どすなぁ」
「……よく言われる」

土方さんは君菊さんにお酌をされながら、楽しげにお話をされてた。
二人を見ていると、美男美女というのはこういうのを言うのかなと思う。
錦絵に描かれているようなぐらい、絵になる二人に何故か胸がもやっ……とした。

「……ん?」

なんだろうと思いながら、私は胸元に手を当てながら首を傾げた。
もやっとするような、ちくっとした針で刺されたような…。

「にしても、立て札を守っただけでこんだけの報奨金が出るんなら、全員捕まえてたら、どんだけの大金が貰えてたんだろうな。なあ左之、どうして逃がしちまったんだ?八人くらいなら、何とかできねえ数じゃねえだろ」
「あっ、オレも、それが不思議だったんだ!敵を絶対に逃がさないよう、取り囲んでたんだろ?一旦捕まえた奴もいたらしいのに、本当は何があったんだよ?」

永倉さんと平助君に聞かれた原田さんは、むっつりとした顔で黙り込んでからお酒を煽った。
そして、しばらくすると原田さんは何故か千鶴へと視線を向ける。

「……千鶴、おまえあの晩、どこかに出かけなかったか?」
「えっ……?」

突然の言葉に千鶴は困惑して、私までも困惑してしまった。

「出かけてませんけど……。どうしてですか?」
「本当に、あの夜は外に出てねえんだな?」
「はい……。私、一人で屯所に出たことはありませんから」
「それに、千鶴は昨晩私といましたよ?部屋で裁縫をして、そのまま私の部屋で寝てましたし……」

原田さんは何故、千鶴に昨晩出かけていないかどうかを聞いたのだろう。
彼の言葉に困惑していれば、原田さんはまた考えるよな表情をして、黙りとしてしまった。
すると、永倉さんが不思議そうに訊ねる。

「おい、どうしたんだ?」
「……見間違いであってくれりゃいいんだが。あの晩は月も出てなくて、暗かったからな。だが、あれだけ近くで見たんだ。絶対に間違うはずがねえ……」
「あの……、原田さん?仰ってる意味が……」
「千鶴が、どうかしたんですか……?」
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