第7章 混沌【土方歳三編】
あの手この手で、伊東さんは私を伊東派に入れようとしているみたい。
そこまでして、なんで私を伊東派に引き込もうとしているのか分からないが、原田さん達は彼の言葉に眉間に皺を寄せた。
「さ、参加したいのは山々ですが……その、この後掃除や洗濯もしないといけませんから」
「あら、そう?次また勉強会をする時は参加してくださいな。では、同志諸君、ここはもう使ってらっしゃるようですから、別の部屋に行くことにしましょう」
伊東さんたちは、にこやかに笑顔を浮かべながら再び廊下へと姿を消してしまう。
彼の姿が見えなくなって、永倉さんは顔を顰めてから毒づき始めた。
「ったく、相変わらず嫌味な連中だぜ」
「仲間を集めてこそこそしやがって、実際は何を議論してるんだかわかったもんじゃねえな。千尋を引き込もとするのも執拗いしな……。近藤さんも平助も、何を考えてあんな奴らを引っ張って来たんだか」
「……あの、私はなんであんなに引き込もうとされてるんでしょうか?」
「そりゃ……、伊東派じゃねえのにお前さんが伊東さんに優しく接してるからだろ。あんな奴らにまで優しく丁寧に接しなくてもいいんだぜ?」
「ま、それだけじゃねえだろうな。何か、考えがあって伊東派に引っ張りこもうとしてると思うぜ……」
その言葉に私は首を傾げる。
何か考えがあってと言うが、それは一体なんだろうと思いながら彼らが消えた方へと視線を向けた。
そして、最近は永倉さんや原田さんだけじゃなく、隊内でも伊東さんに反感をもつ方々が増えているみたい。
だけども、伊東さんはそんな事を気にする様子はなく、仲間を増やし続けている。
そんな時である。
「……武田さん」
武田さんは広間に来ると、辺りを見渡してから怪訝そうに眉間に皺を寄せていた。
「先程、伊東さんたちがここに来た筈だが」
「伊東さんたちなら、先程ここに来ましたが別室で議論すると仰って行かれましたが……」
「別室だと?……会合を開く際は一声かけてくださいと言ってあったのに。もしや私を参加させる為に、わざとか……?」
そう呟くと武田さんはそのまま広間から出ていってしまった。
「……何だ、ありゃ?」
「伊東さんの腰巾着をしようと思ったが、相手にされてねえってことだろ。武田さんも最近は隊内に居場所がねえみてえだしな」
「そう、なんですね……」