第7章 混沌【土方歳三編】
永倉さんから土方さんの名前が出ると、相馬君と野村君は目を見張りながら緊張した面持ちになった。
「土方副長、直々の処分となるのか……」
「つーか、処分ってなんですか?褒められるとこじゃないんですか!?」
それから、暗い広間には灯りが灯された。
灯りの日で明るくなった広間には、相馬君と野村君が正座して座っている。
そんな彼らの目の前には厳しい顔の近藤さんと土方さんが座っていた。
周囲には相馬君たちを囲むように、私たちの事情を知っている幹部の方々が並んでいた。
その光景に、相馬君と野村君は緊張した顔をしている。
「お、おいおい。なんだよこの物々しさは」
「……局長、副長。これはいったい、どういうことなんでしょうか……」
「うむ、二人には今後、特別な任務を申しつけようと思ってな」
「いずれ話す必要があるかと思ってたが……。まさか、こんなに早くなっちまうとはな」
土方さんは大きくため息を吐くと、二人の顔を交互に見やった。
「これから話す内容は、ここに居る者と、外を警護している島田と山崎しら知らねえ。他言無用だと肝に銘じておけ」
「承知しました!」
「わかりました!」
「では、これより二人は見習いではなく、正式な小姓として取り立てることにする。そして、雪村君たちの後輩として、その素性をここに居る者以外から守って欲しい」
近藤さんの言葉に、相馬君と野村君は驚いた顔をしながら私たちへと視線を向けた。
だけど、直ぐに近藤さんへと視線を向け直してから相馬君は息を飲む。
「雪村先輩たちの……素性……。何か重大な秘密があるんですか?」
「ひょっとして、どっかの殿様のご落胤だったりとか……」
二人の言葉に平助君が呆れたようにため息を吐く。
「んなわけねえだろ。そうじゃなくてな……」
すると、平助君の言葉を遮るように原田さんが相馬君達へと質問を投げかけた。
「おまえら、こいつらを見て何か気付かなかったか?」
「……いい先輩たちだと思います」
「さっき野村君が平助たちに殴られた、理由を考えてみたらいいんじゃないかな」
「へ?俺?あの時は、女なんとか……言って……しまって……」
「……おい……それだ……。いや、そんな……そんな馬鹿な……!」
沖田さんの言葉で、相馬君と野村君はついに気付いたみたいだ。
私と千鶴の重大な秘密というのを。