第7章 混沌【土方歳三編】
そうして、今では立派な湯船が据え付けられたのだ。
私や千鶴は女なので、お風呂に入れるということは凄く嬉しかった。
でも、女なので他の隊士の方と入る事はできない。
なので、隊士さん達が入り終わった後に二人でひっそりと入っている。
「松本先生には感謝しなくちゃいけないね」
「うん。松本先生のおかげで、湯船に浸れるからね。……あ」
ふと、私は部屋に手ぬぐいを忘れてきたことに気が付いた。
お風呂に入った後に、身体を拭うのが無ければ困ってしまう。
「ごめん、千鶴。手ぬぐい忘れてきたから先に行ってて」
「あ、わかった。お風呂で待ってるね」
「うん!」
直ぐに私は部屋へと戻り、手ぬぐいを手に取ると急いでお風呂場へと向かおうとした。
すると、廊下には千鶴がなぜが立っていている状態だ。
もしかして待っていたのかな。
そう思いながら近付いていれば、何故か千鶴の目の前には三木さんの姿があった。
そして、何故か三木さんは千鶴の着物へと手を伸ばしている。
「千鶴っ!!」
慌てて駆け寄ろうとすれば、私よりも速くに誰かが千鶴と三木さんの間に割って入った。
「ーー雪村先輩から手を放せ!」
二人の間に割って入ったのは相馬君であり、彼は三木さんの胸ぐらを掴んで壁へと押し付けていた。
それを見ながら私は直ぐに千鶴に駆け寄る。
「千鶴!」
「千尋……、それに相馬君……!」
「……おい見習い。この手は何の真似だ?立場ってもんをわかってんのか?」
「確かにあんたは組長かもしれないが、この新選組は本来、同志の集まりだと聞いている。少なくとも組長だからと言って、横暴を黙って見るのを是とする組織ではないはずだ」
「組長様の行動。横暴とぬかすか。おもしれえ、やるか小僧?新選組は実力主義だ。言い分は刀で聞いてやるよ!」
三木さんは不敵に笑いながらも、相馬君を挑発するような言動をする。
だけども、相馬君は胸ぐらを掴んでいる手の力を緩めず、でも挑発には決して乗らなかった。
「俺はそれでも構わない。だが俺が返事をすると、そっちが喧嘩を売った形になるぞ。幸いなことに証人もいる。そうだな、野村。それに、野村だけではなく、弟君の方の雪村先輩だっている」
「お、おおう。そうだ、そうだ!局中法度でもなんか……、そんな感じのがあったはずだぜ」
「そうだね」