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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第7章 混沌【土方歳三編】


「確かに……。二人には食事についても教えた方がいいかもしれません。幹部の方や隊士の方々の食事の好みや苦手なものは把握した方がいいですから」

沖田さんや伊東さん、それに三木さんは食事に対して厳しい所がある。
まあ、沖田さんについては好き嫌いが多いので、二人は知っておいた方がいい。

「ははは、雪村君たちも少しずつ先輩らしくなってきましたね」
「私より千鶴の方が先輩らしくなっていますよ。よく、二人の事を気にかけて教えていますから」
「そんな……千尋もまで。先輩と言っても、相馬君ちに教えられることはほとんどありませんし」
「そう?でもよく、洗濯の仕方や掃除の仕方も教えてるじゃない」
「それは千尋もでしょう?」
「私は、あまり二人には教えてないよ?土方さんの事で忙しくしてるし……」

私は土方さんが心配でよく傍にいるので、彼らには教えることは少ない。
でもその代わり、千鶴はよく二人の傍にいては物事を教えてあげているから、千鶴の方が先輩らしいのだ。

「そうかい、そうかい。千鶴君の方が先輩らしいのかい」
「そんな事ないですから!私なんて教えられることよりも、むしろ気付かされることのほうが多いぐらいですから」
「先輩というのはそういうものだよ。何も自分が教えるばかりじゃない。人に教えることを通じて、自分もいろいろと学んでいくものさ」
「そういうものなんでしょうか……」

千鶴はそう呟いて首を傾げていたけど、彼らから【先輩】と呼ばれている時は嫌そうな顔はしていない。
むしろ、楽しげに教えてあげている姿をよく見る。
そんな千鶴を見ながら、井上さんと島田さんは席を立った。

「さて、話も終わりましたし、そろそろ戻りましょうか、井上さん」
「ああ、そうしよう。あまり遅くまでお邪魔するのも悪いからね。……ああ、それと雪村君たち。先ほど隊士たちが一通り風呂に入り終えたようだよ」
「雪村君たちも入ってくるといいと思います。疲れが取れますからね」
「わかりました。それではお言葉に甘えて……」
「入ってこようと思います」

この西本願寺に屯所を移した時には、お風呂はひとつもなかった。
お風呂に入りたい人は市中の湯屋に向かったり、身体を洗いたい人は井戸水で身体を拭いたりとする程度。

だけども、松本先生が来られた時に生理的によろしくないと近藤さんは怒られてしまったのだ。
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