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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第7章 混沌【土方歳三編】


「俺も、お前の【休め】って言う言葉聞き飽きたな。それよりお前」

土方さんは麦湯の入っていた湯呑みを置くと、私へと視線を向けてくる。

「お前は、表向きが小姓なだけだ。無理に小姓の仕事をしようとしなくていい。つーか、何でそこまで俺を気にかけるような事をする」
「それは……」

医者の娘として、不健康な生活や無理して身体を壊しそうな事をする土方さんが心配だから。
それだけが理由じゃない……時折、悲しげな背中をしている土方さんが気になるからだ。

でも、最後の理由は言わない方がいいかもしれない。
なんとなくそう思って、私は何度か口を動かしてから言葉を発した。

「医者の娘なので……不健康な生活や、無理して身体を壊しそうな土方さんが心配なだけです」
「……まあ、医者の娘なら気になるか」

小さく笑いながら落雁を食べる土方さんを見ながら、私は口を少しだけ噛んだ。
何で、私は彼の事をこんなにも気にしてしまうのだろうかと悩みながらーー。

日が傾き、夕焼けが屯所を照らし出した時刻。
私は、手当する為の道具を持ってから、昼間に沖田さんと相馬君と野村君が稽古をしていた中庭へと向かった。

「千鶴。手当する為の道具、持ってきたよ」
「ありがとう、千尋」

軟膏と包帯、そして水の入った桶に手ぬぐい。
私たちはそれぞれの道具を持ちながら、地面に転がっている二人に声をかけた。

「……ええと、二人とも大丈夫?」
「かなり、ぼろぼろだけど……」
「大丈夫に見えるか……これが……」
「おい野村……先輩たちに対して、少しは口の利き方に気をつけろ……」

ぐったりとしている彼の腕や胴には、青紫のアザが沢山出来ていた。
それを見れば、確かに大丈夫そうには見えないので苦笑を浮かべる。

千鶴は濡らした手ぬぐいを絞りながら、二人のアザを冷やして、私はアザの部分に軟膏を塗っていく。
時折、沁みるのか二人は痛そうに顔を歪ませていた。

「相馬君も野村君も、屯所での生活にはもう慣れた?」
「二人が屯所に来てから、だいぶ経ったけど、どう?」
「ええ、まだ学ぶところは多いですが、おかげさまで少しずつ」
「けど正直、ここまで稽古が厳しいとは思わなかったぜ。そういえば、千尋先輩は斎藤さんに稽古つけてもらってるんだよな?」
「そうだよ。斎藤さんに時間がある時だけね」
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