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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第7章 混沌【土方歳三編】


「雪村君たち、悪いがトシの小姓として彼に仕事を教えてやってくれないか」
「……え!?」
「私たちが、ですか……!?」

私たちが驚いていれば、斎藤さんも少し驚いた様子をしていたけれども、何時もの落ち着いた表情をしてから近藤さんに声をかける。

「局長、よろしいのですか?局長付ともなれば、よほど信頼のおける者でなければ……」
「彼なら大丈夫だろう。俺も最近忙しくなって、身の回りを見てくれる者が欲しいと思っていたんだ。それに彼ならば、いずれは雪村君たちの事情も分かってくれると思う」
「まあ……近藤さんがそう言うなら、俺から文句はねえ」

私たちの事情。
近藤さんの意味深に告げる言葉に、私たちは小さく頷き合ってから相馬さんへと振り返る。

これから同じ小姓。
そんな彼にどう教えればいいのだろうと思っていれば、相馬さんは輝いた目で私たちに近付いてきた。

「これから先輩と呼ばせていただきます。よろしくお願いします!」
「せ、先輩……!?」
「え、な……なぜ、先輩?」

先輩だなんて今まで言われた事がない。
私と千鶴は驚いてお互いの顔を見合わせていれば、相馬さんは未だに輝いた目をしていた。

「先日入隊した野村君という隊士がいる。彼共々、雪村君たちに小姓としての心得を、いろいろ教わるといい」
「ま、待ってください!相馬さんも本当に私たちから教わる形でいいんですか……!?」
「私たちに教わっても、特に何も……」
「もちろんです。それと先輩たちなんですから、敬語も、さん付けもいりません」
「さん付けじゃないというと……」

千鶴は戸惑った表情をしながら、私の着物の袖を引っ張ってくる。

「これ、さん付けじゃなくて本当にいいのかな?それだと……君付けになるけど」
「……本人が良いなら、良いんじゃないかな」

恐る恐ると、千鶴と私は確かめるように口に出した。

「相馬ーー君?」
「相馬君……」
「はい、よろしくお願いします。ーー雪村先輩たち!」

相馬君を見ていると、なんだか大型犬を相手しているような気がしてきた。
そう思っていれば、土方さんは軽く笑いながら相馬君に話しかける。

「相馬。雪村の弟の方をあまり手本にはするなよ。口煩いどころか、人が飯を食わねえと口に突っ込んできやがるからな」
「それは!土方さんがお休みしなかったり、食事をしないからでしょう!?」
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