第7章 混沌【土方歳三編】
「まあ、確かにコイツは増々口煩くなってやがるな」
「土方さんまで……!言っておきますが、私が口煩くしているのは、土方さんがちゃんと休まずにお仕事をされたり、沖田さんはちゃんと養生しないからですよ?」
「休憩はしているだろうが!」
「あれは休憩には入りません!ただ、お茶を飲んでいるだけで、お茶を飲んでる間もお仕事されてるじゃないですか!」
私と土方さんが口争いをしていれば、近藤さんは可笑しそうに笑っていた。
そして、近藤さんは楽しげに笑っていたけれども、直ぐに厳しい表情をされる。
「ともかく、近日中にもどこかで衝突が起きることは間違いない。何かあればお呼びがかかるだろうし、心構えだけはしておくべきだろう」
その言葉に、土方さんと沖田さんが頷いていれば、近藤さんは何かを思い出したように口を開く。
「……おお、そういえば。その際に色々と見てきたのだが……。幕府の陸軍隊を視察している途中で、相馬君とばったり再会したんだ」
「相馬って、あの相馬さんですか?」
「誰ですか、それ。そんなの知り合いにいましたっけ」
相馬さんは、平助君達がとある錦絵を持っているからと連行してきた人。
そして、だいぶ前に原田さんの巡察で遭遇して、千鶴の体をべたべたと触っていた。
相馬さんが千鶴の体を触った事を思い出すと、少しだけ苛立ちが湧いてくる。
それを察したのか千鶴は苦笑いを浮かべながら、沖田さんに説明をした。
「ほら、平助君たちが屯所に連れてきて、錦絵の件で揉めていた人です」
「ああ、いたねそんなのも。印象薄いから覚えてなかったけど」
「あの人、前に原田さんの巡察で会ったんですが……。その時に千鶴が女と気付かずに、べたべたと触って……。もし次同じことをしたら、指を斬りたい」
「千尋!?物騒な事言わないで!?」
千鶴に注意をされて、不貞腐れたようにそっぽを向く。
だけど、相馬さんは確か藩に所属されていたはずなのに何故陸軍隊にいたのだろうと思っていれば、千鶴が質問をしていた。
「でも、どうして相馬さんが陸軍隊にいたんですか?以前の話だと、どこかの藩にお仕えしていたはずですよね?」
「脱藩したって事だろ。あいつ、自分の藩に不満があったみてえだが……馬鹿な奴だ、自分から侍を捨てるなんてよ」
すると、土方さんの言葉を聞いた近藤さんが慌てるように口をはさんだ。