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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第7章 混沌【土方歳三編】


「あんたには総長として、ずっと表舞台で近藤さんを支え続けてほしかった」
「土方君らしくもない……。平静さを失っていませんか?」

すると、山南さんの眼差しが不意に私の方へと向けられていた。
その視線から逃げようとしたが、その前に山南さんと目が合ってしまう。

(しまった……!)

山南さんの行動を、最初怪訝そうにしていた土方さんだが、彼も私の姿に気がついて目を見張った。

「雪村、おまえ……」

逃げ出しても意味が無い。
私は恐る恐ると、姿を出すと項垂れるように、そして彼らの視線から逃れるように俯いた。

「すみません、盗み聞きなんてしていて……。声をかけられる機会を失ってしまって……」
「……っ」
「土方君は私のことよりも、他のことを気にしてください。例えば伊東派なんてどうです?妙な動きがあるようですが……」
「……ああ、手は打つさ。それが副長の務めだからな」

土方さんの言葉に、山南さんは満足そうに目を細めてから頷いた。
それから、私へと軽く会釈をすると中庭から出て行ってしまう。
そんな彼の姿を見送ってから、私は恐る恐ると土方さんへと声をかけた。

「あの、土方さん……」
「雪村。おまえはまだ少し、ここに残ってろ」
「え?あ、……は、はい……」

部屋に戻ろうかと考えていたが、呼び止められてしまって、私は中庭に留まった。

「おまえは馬鹿じゃねえだろ。だから、もう少しわきまえた行動を取れ。余計なことを聞くほど、自分の立場が危うくなるのはわかってんだろうな……?」
「それは……わかっています」
「だったら気をつけろ。余計な騒ぎは起こすな。つうか、なんでこの時間帯にうろうろしてんだ」

呆れたように聞いてくる土方さんに、私は包み隠さずに話をした。

「寝付けなくて……素振りでもしようかと思いまして」
「……成る程な。だが、この時間帯に中庭に出るんじゃねえ。また武田とかに絡まれたらどうするんだ」

確かにそうだと思い、私は思わず顔を俯かせた。

「さっさと部屋に戻れ」

土方さんはそう言うと、背を向けてからゆっくりと歩き出した。
その姿はとても疲れているような、悲しそうなもので、思わず呼び止めてしまう。

「土方さん!」
「あ?なんだ」

呼び止めたのは言いけれども、何を話すべきかと思いながら、ずっと思っていた事を口にした。
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