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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第7章 混沌【土方歳三編】


誤魔化せたとは思っていない。
だけど、土方さんはそれ以上追求してくる事はなかったーー。

その後、松本先生は新選組の方々の様子を見る為に、屯所に通って下さるようになった。
そして……山南さんは羅刹を束ねるようになり、羅刹の集団を【羅刹隊】と名付けたらしく、彼らは【羅刹隊】と呼ばれるようになる。

「【羅刹隊】……かあ。ねえ、千尋。本当にこのまま羅刹の研究を続けても大丈夫なのかな」
「……わからない。でも、山南さんは多分辞めないと思うよ」
「だよね。……それと、父様が尊攘派の人たちと関わりを持っているのは本当なのかな……でも、そうだったとしてなんでだろう」
「……あの男が言った事が、事実とは限らないよ。だから、気にしないでおこう」

私はそう言いながら、風間千景の言葉を脳裏でずっと繰り返していた。


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ー慶応元年・七月ー

私と千鶴が京に来て、もう既に二度目の夏を迎えていた。
季節が過ぎ去るのはどうも早く、そして父様を見つけられない日々が長く続いている。

「……今年は、酷い事件は起きてないなあ」

昨年は池田屋事件や禁門の変など、大変な事件が続け様に起きていた。
だけど、今年はそういう事件も起きることがなく、少し平和な日々が続いている。

(……平和なのはいい事。でも、父様は見つからなければ、風間千景たちが現れたりと厄介な事が続いてるなあ)

寝返りをうちながら、なかなか寝付けない事にため息がこぼれてしまう。
今夜は蒸し暑く、虫の鳴き声も妙に煩く感じてしまった。

「……寝れないし、外で少し素振りでもしようかな」

羅刹という存在を知ってから、私と千鶴は以前より行動制限をかけられなくなっている。
松本先生との縁が、新選組での立場をいい方向にしてくれたのではないか……そう、千鶴と話していた。

襦袢から何時もの着物に着替え、刀を手にしてから部屋を出れば、生ぬるい空気が肌を撫でる。
だけど、不愉快なものじゃなく、私は少し深呼吸をしてから中庭へと向かった。

「……ん?」

その途中、人影が見えて足を止めた。
こんな時間帯に誰だろうと思いながらも、気にせずに中庭へと向かえば、そこには土方さんの姿があった。

(……土方さん?)

ぼんやりと立っているその姿は、何処か悲しげで寂しそう。
そして、誰かを待つように身動ぎをしていた。
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