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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第7章 混沌【土方歳三編】


「……雪村千鶴、雪村千尋。綱道は、こちら側にいる。意味はわかるな?おまえ達の父は、幕府を見限ったということだ」
「え……?」
「幕府を、見限った……?」

風間千景は、うっすらと笑みを浮かべるだけ。
私と千鶴が困惑しているが、その困惑している理由の説明もしないまま、言葉を紡いでいく。

父様が、幕府を見限っている。
その言葉は到底信用が出来ない……なにせ、父様はずっと幕府の為に働いてきたのだから。

「おまえ達がここにいる意味は何だ?よく考えることだ。そして雪村千尋……お前が、雪村千鶴を何から守るべきなのかちゃんと覚えているのか?ここにいて守る意味があるのか、よく考えておけ」
「っ……!」

風間千景の言葉に目を見張る。
そんな私に対して薄く笑うと、風間千景はまるでゆらめく影のように、穏やかな動きで背を向けると去って行った。

(私が、千鶴を何か守るべきなのか……)

私は竹ぼうきを強く握りしめると、顔を俯かせながら地面を見つめる。

「鬼って、一体何なんでしょう……?」
「……奴らが何者かはわからねえが、普通の人間じゃねえのは間違いねえな。今まで、それなりの数の相手と斬り合ってきたが……あれほどの強さを持った奴とは、会ったことがねえ。むしろ、鬼だって言われたほうがまだ納得できるぜ」

千鶴と土方さんの言葉を聞きながら、私は風間千景が消え去った方へと視線を向けた。
何時の間にか姿が無くなっている。

「土方さんに鬼呼ばわりされるってことは、こりゃ、本物かもしれねえな」
「だよな。鬼副長が認めた鬼だもんな」
「うるせえ、黙ってろ。俺は、真面目に話してんだよ!」

先程までの嫌悪な雰囲気が、原田さん達によって変えられた。
その様子を見ながら、私がまた顔を俯かせていれば土方さんに声をかけられる。

「おい、大丈夫か。顔色悪いぞ」
「……え?あ、いえ……大丈夫です」
「……お前、あいつらの事何か知ってるのか?前にもあいつらと遭遇した時に、顔色がかなり悪くなってたが……」

土方さんは、周りをよく見ている。
そして、彼は鋭い所もあるので、私は彼の言葉に少しだけ肩を跳ねさせてから誤魔化すように笑った。

「いいえ、知りません……。ただ、正体が分からない人たちによく分からない事を言われて、困惑していたら気分が悪くなってしまったみたいです」
「……そうか」
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