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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第7章 混沌【土方歳三編】


松本先生がお帰りになって、私は千鶴の元へと向かった。
竹ぼうきで丁寧に掃き掃除をしている千鶴は、私に気が付くと手を振る。

「向こうの掃除終わったから、私もここの掃き掃除するよ」
「ありがとう。二人なら長引かずに終わるかな」

二人で会話をしながら、掃き掃除をしている時だった。

「……こんな所で、何をしている?」
「っ!?」
「な……!?」

地の底に響くような低い声が聞こえ、千鶴は身をすくませて、私は慌てた声が聞こえる方へと視線を向けて驚愕した。
そこには、あの男がいたのだ。

「誇り高き鬼の血を引いているお前たちが、人間の使い走りをさせられているとはな」
「風間、さん……!」
「風間千景っ……!」

呆れたような、小馬鹿にするような瞳で私たちを見ていたのは風間千景であった。
慌てて腰へと手を伸ばしたが、掃除をするからと刀は部屋に置いている事に気が付き、汗を一筋頬へと流す。

こんな時に限って、まさか現れるなんて。
私は千鶴の目の前に立つと、刀の代わりにと竹ぼうきを握ってから身構える。
すると、背後にいた千鶴が声を張り上げた。

「こ、ここへ何をしに来たんですか?」
「……どうやって、新選組の屯所に入り込んだの?」

そんな私たちを見て、風間千景は鼻で笑った。

「……ふん。そんな物で俺と戦う気か?滑稽を通り越して、哀れにすら感じるぞ」
「女だからと、見くびるのは間違いだと思うけれど……」

確かに、あの土方さんを圧倒した男とこんな竹ぼうきで戦えるとは思えない。
だけども、精一杯に甘く見られないようにと虚勢を張る。

風間千景の瞳は冷ややかで、嘲るような目をしていた。
この男と戦えるのは到底無理だとわかっているが、周りに隊士の方はいない。
私一人で、なんとか対処しなければ……。

「そういきり立つな。今日は、戦いに来たわけではない。お前たちと綱道が関わりがあるかを確かめに来ただけだ」
「父、と……?」

千鶴が、思わず答えてしまった時だ。
風間千景は僅かに驚いた様な様子を見せていた。

「……父だと?それは綱道のことか?」
「あなたの言う【綱道】が【雪村綱道】のことなら、私たちの父です」
「……成る程」

風間千景は驚いた様子を見せていたが、千鶴の言葉に何か納得したのだろう。
薄く笑みを浮かべながら、目を細めていた。

「一体、父の何を調べにーー?」
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