• テキストサイズ

君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第6章 宵闇【土方歳三編】


「兄弟揃って、厄介な人たちだなあ……」

失礼な事は言ってるのは理解しているけど、私は小さく呟きながら千鶴が居るはずの方へと走っていく。
その時、三木さんの九番隊が待機している前を通りがかると、三木さんに呼び止められた。

「なんだよ、兄弟揃って伝達か?小姓なのに、使いっ走りなんだな」
「三木さん、今はお仕事中なので私なんかに構わずに集中されたらどうですか?」
「おい、それは嫌味を言ってるつもりか?」
「いえいえ、そんな事はありませんよ。では」

何故、兄弟揃って絡んでくるのだろう。
そう思いながら走っていれば、千鶴の後ろ姿を見つけた。
だが何か様子がおかしい……そう思いながら近寄れば殺気を感じる。

「……千鶴!」

名前を叫んで近寄れば、人目も届かない城の陰、篝火は遠く、月光のでも触れるぎりぎりの縁にある者たちがたたずんでいた。

「あなたたちは……!?」
「……千鶴!下がって!」
「千尋!?」

私はすかさず千鶴の前に立つと、刀へと手をかけて彼らへと視線を向けた。

「……気付いたか。さほど鈍いというわけでもないようだな」

特徴的な風体を持った三人の男たち。
その中の一人は、あの禁門の変で隊士の方を殺した【風間千景】の姿もあった。
何故、この男がここにいるのだろうと思いながも体が僅かに震えていくのに気付く。

男たちの視線。
その視線はまるで、強弓で射抜かれるかのようなものであり、背中に汗が伝う。

「風間千景……」

彼の左右には見た事がない男が二人いる。
だが、斎藤さんと原田さんに聞いた情報を記憶から手繰り寄せた。

髭をたくわえた男が天霧九寿。
そして、青みがかった黒髪の男が不知火匡。
池田屋や禁門の変で新選組の前に立ち塞がった男たちが、何故ここにいるのか。

「何故、あなた方がここにいる」
「その【なぜ】っつうのは、どうやってここに立ち入ったのかを訊いてやがんのか?だったら、答えは簡単だ。オレら【鬼】の一族には、人間が作る障害なんざ意味を成さねェんだよ」

【鬼】という言葉に、私の心臓が強く跳ねる。

「我々は、ある目的の為にここに来た。……君たちを捜していたのです、雪村千鶴、雪村千尋」
「え……?」

天霧九寿の言葉に、千鶴が小さく声を漏らし、私の心臓は激しく鳴り響いていた。
/ 768ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp