第6章 宵闇【土方歳三編】
やはり、最近は伊東さんによく声をかけられることが増えた気がする。
掃除をしている時や、洗濯物をしている時などに伊東さんは姿を表しては私に声をかけていた。
「ちょっと、お聞きしたいことがあるの、貴方に」
「私にですか?」
「ええ。実はね、たまにだけど勉強会に開いているの。私と共に入隊してきた隊士や、他の隊士も集めてね」
「勉強会、ですか……?」
勉強会という言葉に首を傾げていれば、伊東さんは小さく頷く。
「攘夷についてや、今後の日本が向かっていくべき未来についての勉強会よ。よければ参加されないかしら?」
「……攘夷に、日本について」
私は正直、そういう事については詳しくはない。
だけどもそういう知識を身に付けるのも必要なのだろかと悩んでいれば、伊東さんは私の悩む姿を見て声を少し出して笑った。
「ふふ。もし、知識を付ければ土方君のお役にも立てるかもしれないわよ」
「……土方さんの、お役に」
確かに小姓であり、しかも京の治安を守る新選組にいるのなら知識は必要かもしれない。
だけども、小姓と言っても表向きがそうなだけだから本当に必要なのだろうか。
悩みに悩んでいた時だ。
鋭い声が、私の苗字を呼ぶ。
「おい、雪村!」
「え、あ、はい!?」
驚いて声がした方へと振り向けば、そこには厳しい表情をした土方さんが立っていた。
そして、土方さんは早足でこちらへと向かってくると、私と伊東さんの間に立つ。
「伊東さん、俺の小姓に何か用でも?」
「……少し、お話をしていただけですわ。別に、土方君の小姓を取ろうだなんて思っていないから、そんな怖い顔をされないでくださいな」
空気が少しだけぴりつく。
私は土方さんの背中を見て、彼の背中から伊東さんを見たりとしていれば、伊東さんが背を向けて歩き出す。
そして、顔だけをこちらへと向けた。
「では、私はこれで失礼。千尋君、少しでも興味があれば、いつでも声をかけてくださいね」
「は、はい……」
「それでは、ごきげんよう」
伊東さんの姿が完全に見えなくなった途端、土方さんは厳しい顔つきのまま、私の方へと振り向いた。
「おい。伊東に何を言われた?」
「え、あ……勉強会に参加しないかと誘われました」
「勉強会ぃ?なんの勉強会だ」
「えっと、攘夷とか……今後の日本が向かっていくべき未来の勉強会と、言われていました」