第1章 始まり【共通物語】
そして、もう一つ、父様に言われた事を思い出した。
【何があっても千鶴を守りなさい。千尋、お前の命を懸けてでも、命を捨てることになっても絶対に】
千鶴は守らなければならない。
私が死ぬ事になっても、千鶴の事は絶対守らなきゃいけないのだ。
「私は、見ました」
「千尋!?」
「私は見ましたけど、この子は見ていません。私の背中に隠れていて、一部始終まで見ていません」
「何言ってるの……!?」
私の言葉に千鶴は目を見開かせていて、周りの人達も驚いた表情をしている。
だけど、千鶴を助けるにはこの方法しかないかもしれない。
でもこの言葉が通じるかどうかは分からない。
「わ、私も見ました!でも、誰にも言いません!」
「偶然、浪士に絡まれていたと言う君たちが、私たちに敵対する者とまで言いませんが……。君に言うつもりがなくとも、相手の誘導尋問に乗せられる可能性はある。それに、君はそちらの子を守ろうとしたようですが、見たと言ってしまいましたしね…」
「つ……」
「う……」
山南さんの言葉に、喉に言葉が詰まって出てこなくなってしまった。
「話さないと言うのは簡単だが、この者たちが新選組に義理立てする理由もない」
「約束を破らない保障なんてないですし、やっぱり解放するのは難しいですよねえ。ほら、殺しちゃいましょうよ。口封じするなら、それが一番じゃないですか」
「そんな……!」
「……総司、物騒なことを言うな。お上の民を無闇に殺して何とする」
「そんな顔しないでくださいよ。今のは、ただの冗談ですから」
「……あんたは冗談に聞こえる冗談を言え」
今のは絶対冗談なんかじゃない。
本気で、殺そうと思っていたと直ぐに分かる言葉だった事が分かるから冷や汗が止まらなかった。
「ふふっ……」
「しかし、何とかならんのかね。……まだこんな子供たちだろう?」
「私も何とかしてあげたいとは思いますが、うっかり漏らされでもしたら一大事です。さてーー。私は副長のご意見をうかがいたいのですが。いかがですか、土方副長?」
山南さんの言葉に土方さんは小さく息を吐き出した。
「俺たちは昨晩、士道に背いた隊士を粛清した。……こいつらは、その現場に居合わせた」
「ーーそれだけだ、と仰りたいんですか?」
「実際、このガキ達の認識なんざ、その程度のもんだと思うんだが……」