• テキストサイズ

君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第6章 宵闇【土方歳三編】


その言葉に、私と千鶴は思わず沈んだ表情をしてしまった。

「それが、全然……」
「古高俊太郎の時の情報から、一つも……」
「……やっぱ、見つからねえか。オレも江戸に戻った時、おまえらの家の様子を見に行ってみたんだけどな……。人が戻ってきた様子はなかったし……本当、どこに行っちまったんだろうな」

何時も明るい平助君の沈んだ表情を見ていると、釣られて私達も気分が落ち込んでしまう。
というよりも、平助君はここ最近落ち込んでいる様子をよく見るようになった気がした。

何か、江戸であったのかな。
そう思っていれば、千鶴は平助君へとお礼の言葉を述べていた。

「わざわざ行ってきてくれたんだ。……ありがとう」
「平助君、ありがとう……」
「いや、別に礼を言われるようなことじゃねえって。そもそも、おまえらが今みてえに自由に外に出られねえのも、元といえばオレたちの……」
「平助君?」
「どうしたの?」

突然、歯切れ悪く言葉を途切れさせた平助君に二人で声をかけた。

(やっぱり、江戸から帰ってきてからの平助君は、様子が少しおかしい。何時もの元気がない気がする……)

やっぱり何かあったのかもしれない。
そう感じていたのは私だけではないようで、千鶴が心配そうに声をかけた。

「ねえ、平助君。久々に京に戻ってきてみて、どう?江戸とは、やっぱり違う?」
「あー、そうだな。町も……人も、結構変わった気がする……」
「人も……?」

江戸にはもうかなりの間、戻っていない。
今の江戸がどんな状態なのかわからないけれども、やっぱり平助君は江戸に戻った時になにかあったのかもしれない。

「平助君」
「……?」

名前を呼んで、話しかけようとした時だ。
平助君は何かに気付いたようで、通りの向こうへと手を振った。

「おーい、総司ー!そっちの様子はどうだった?」

彼が手を振った先には、同じように巡察をしていた沖田さんがいた。
沖田さんはゆっくりとこちらに来ると、平助君の質問にこたえる。

「特に、何も。いつも通りだね。でも、将軍上洛の時には、忙しくなるんじゃないかな」
「上洛……将軍公が京を訪れるんですよね?」
「そういえば、近藤さん達が話されているのを聞きました……。将軍公が来られるって」
「そう、近藤さんも張り切ってるよ。近藤さん、家茂公のことをすごく尊敬してるから」
/ 768ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp