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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第6章 宵闇【土方歳三編】


伊東さんは、永倉さんの言葉を軽く受け流すと、居並ぶ隊士の方々を見回してから言った。

「……皆さんの顔色がよろしくないのは、もしかして、昨晩の騒ぎと関わりがあるのかしら?」
「あ、いや、その、だな……」

伊東さんの問に、幹部の方々は少しだけ動揺した様子を見せる。
その中で、近藤さんは助けを求めるように周りに視線を送っていた。

私も誤魔化せるような言葉は言えない。
それに伊東さんは鋭い方みたいだから、私が言ってもボロを出しそうなので黙っていれば、永倉さんが原田さんに声をかけた。

「よし!……誤魔化せ、左之!」
「あ?俺か?実は昨日ーー」
「大根役者は、出しゃばらないでくれるかな。そういうのだったら、もっと得意な人がいるじゃない」

沖田さんは原田さんを制すると、斎藤さんへと目配せをしていた。
すると斎藤さんは、浅く頷いてから立ち上がると、伊東さんの前へと進みでる。

「……伊東参謀がお察しの通り、昨晩、屯所内にて事件が発生しました」
「まあ、事件ですって?」
「はい。ですが我々もまだ、全容を把握できてはいない状況です。今の時点での説明は、余計な誤解を招くばかりかと。ですので今夜にでも場を設け、詳しくお伝えさせて頂きたく存じます」
「……そういうことですの。事情はわかりましてよ」

伊東さんは斎藤さんの説明を聞くと、少しだけ機嫌良さげに笑っていた。

「今夜のお呼ばれ、心待ちにしていますわ。では、ごめんあそばせ」

あっさりと説明を受け入れた伊東さんは、直ぐに広間を後にした。

「……何とか見逃してもらえたみたいだね」
「えっ?見逃してもらえた、って……」

沖田さんの言葉に千鶴が問かければ、先程まで黙っていた土方さんが面倒くさそうに眉間に皺を寄せながら説明をしてくれる。

「……伊東さんは何だかんだで、頭が回る人だからな。幹部が勢ぞろいしてる場に、山南さんだけいねえんだ。あの人絡みで何かあったってことぐらい、すぐに勘付くだろ」
「あ……」
「そう、ですね……」

伊東さんは、確かに頭がよく回る人。
だから、この場を見てすぐに山南さん絡みで何かあったと察しているのは当たり前。
そして、大まかな事情を察知した上、あえて何も聞かずに去っていった。

そんな時、不意に襖が開いた。
驚いて振り向けば、そこには山南さんが立っていて、皆が目を見開かせる。
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