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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第6章 宵闇【土方歳三編】


伊東さんが来られたばかりの頃、私は炊事当番であり、新しく来られた隊士さん方の食の好みや苦手なものを把握しようとしていた。

「あとは、伊東さんと三木さんに聞くだけかな……。あまり土方さんには関わるなって言われてたけど……」

土方さんからは【関わると面倒臭い事が起きるから、関わるな】と言われていたが、流石に来らればかりの屯所の食事で苦手な物を出してしまったら申し訳ない。
そう思って、私は伊東さんと三木さんの姿を探していた。

暫くすれば、廊下で伊東さんと三木さんが歩かれているのを見つけた。
そして私は早足で二人を追い掛けて、声を掛ける。

「伊東さん、三木さん。申し訳ありません。今、お時間よろしければお聞きしたい事がありまして」
「……あら、貴方は確か」
「土方さんの小姓を勤めさせて頂いている、雪村千尋と申します」
「そうそう、雪村君でしたね。で、何かご用かしら?」

伊東さんは貼り付けたような笑みを浮かべていた。
隣にいる三木さんは、面倒くさそうな表情を浮かべていて、思わず苦笑いを浮かべる。

「実は、今日は私が炊事当番でして……。伊東さんや三木さんの苦手な食べ物や食べられないものをお聞きしたくて……」
「あら、そうですの?別に私も三郎も好き嫌いはありませんよ」
「そうなんですね!」
「にしても貴方、わざわざそんな事を聞いてくるのね」
「え、ああ……その、苦手なものを残される隊士の方もいまして」

沖田さんとか、前に葱が入っていたら残されていたからなあ……と思いながら苦笑いする。
すると、伊東さんは鼻で少し笑いながら言葉を呟く。

「あらあら。作ってもらったものを残すなんて、酷い方も新選組にはいらっしゃるのね。作ってもらっておきながら、文句を言うなんて酷いこと。私や三郎はそんなはしたない事はしませんよ」
「それは、嬉しいです!では、伊東さんや三木さんが満足してくださるような食事を作りますね。それと、伊東さんはお優しいんですね。作られた食事を残さず食べてくださるなんて」
「あら……」

という会話をしたのは覚えていて、私はそれを皆さんに話せば、土方さんたちはうんざりしたような表情をしていた。

「なるほどな。俺たちが伊東さん相手に警戒していたり、あからさまな態度をとってた中で千尋は『お優しいんですね』なんて言ったから気に入られたのか」
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