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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第1章 始まり【共通物語】


だが、なんとなく雰囲気がそうかもしれない。
表情だけが優しくて、纏う雰囲気はなんだか怖いかもしれないと感じた。

「私はいつだって、新選組の規範を第一に考えているだけですよ。その規範……御法度を決めたのは、土方君、君じゃなかったですか?」
「……確かに決めたのは俺だ。だが、今はそんな事を言ってるときじゃねえだろうが……」

そう言いながら、土方さんと山南さんと呼ばれた人はお互い薄く笑ったまま見つめ合っていた。

「トシと山南君は、相変わらず仲が良いなあ」

これを、仲が良いと言えるのだろうか。
なんて思いながら、声がしたほうへと視線を向ければ、また人が良さそうな笑顔を浮かべている人がいた。

新選組はもっと怖い人ばかりいるのかと思っていたが、井上さんやこの人みたいに優しそうな人もいるのだなと考えながら未だに感じる土方さんと山南さんという人の、妙なぴりぴりした空気に顔を顰める。

「ああ、自己紹介が遅れたな。俺が新選組局長、近藤勇だ」
「……局長というと、新選組で一番偉い人、でしょうか」
「貴方が、局長……」

この人の良さげな人が、あの人斬り集団の新選組の局長ということに驚いてしまう。
だが、近藤さんは千鶴の言葉にむず痒そうに笑った。

「いや、まあ……俺が偉いわけじゃない。皆の代表と言うことだよ。それから、そこのトシが副長で、横にいる山南君は総長を務めていてーー」
「いや、近藤さん。なんで色々教えてやってんだよ、あんたは」
「……む?ま、まずいのか?」
「情報を与える必要がないんだったら、黙ってるほうが得策なんじゃないですかねえ」
「わざわざ教えてやる義理はいと思うけど?」
「ううむ……確かにそうなんだが……紹介しないことには話が進まんだろう?」

他の人の言葉に狼狽える近藤さんは、本当に人斬り集団の局長なのかと疑ってしまうぐらいの人だ。
そんな近藤さんを見て、原田さんは皆を取り成すように笑った。

「ま、ここまできたら、知られて困ることもねえけどな」

近藤はまるで怒られた子供のように、少しの間だけしょんぼりとしていたが直ぐに居住まいを正した。
その姿は確かに局長らしいが、やはり局長らしくないとも思える人だ。

「……さて、本題に入ろう。まずは改めて昨晩の話を聞かせてくれるか」
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