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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第1章 始まり【共通物語】


「……おい、てめえら。無駄口ばっか叩いてんじゃねえ」

すると土方さんの呆れ返った声が響き、沖田さんは笑顔のまま肩をすくめて口を閉ざした。

「でさ、土方さん。……そいつらが目撃者?」

別の聞いた事のない声の方へと目線を向ければ、この広間の中でも特別若く見える青年がこちらへと視線を向けていた。

彼が井上さんの言っていた、私たちよりちょっと年上の藤堂さんという人なのだろうか。
そう思いながら目線を少し動かせば、彼の目の前と横にはまた知らない幹部の人達がいた。

「ちっちゃいし細っこいなあ……。まだガキだろ、こいつら」
「おまえがガキとか言うなよ、平助」
「だな。世間様から見りゃ、平助もこいつらも似たようなもんだろうよ」
「ガキ扱いしていいのは、俺みたいな立派な大人になってからだぜ」
「立派な大人って……。まぁ、新八が言っても説得力もなにもねえがな」

まるでからかうように、二人の男の人達が喋る。
恐らく彼らが井上さんの言っていた賑やかな人達、原田さんと永倉さんなのだろう。
確か、髪の短いのが永倉さんで髪の長い方が原田さんと井上さんが説明してくれていた。

「うるさないなあ、おじさん二人は黙ってなよ」
「ふざけんなよ、このお坊ちゃまが!俺らにそんな口きいていいと思ってんのか?」
「平助におじさん呼ばわりされるほど、年は食ってねぇよ。……新八はともかく、俺はな」
「てめえ……。裏切るのか、左之」
「へへーん。新八っつぁん、図星されて怒るって大人ねえよなぁ」

和気あいあいのように喋る彼らだが、ずっと視線は私と千鶴へと向けられたまま。
その目の奥には強い敵意を感じる。

(帰りたい。江戸に、千鶴と父様と暮らしているあの江戸の家に……)

唇を少し噛み締めながら、江戸にある家を思い出していた時であった。

「口さがない方ばかりで申し訳ありません。あまり、怖がらないでくださいね」
「あ……」

優しい言葉をかけられて、声をかけてきた人へと視線を向ければ、井上さんとはまた違う人の良さそうな表情をした男性がいた。

「何言ってんだ。一番怖いのはあんただろ、山南さん」

土方さんの言葉に周りの人達が同意と言わんばかりに大きく頷いている。
人が良さそうに見えるのは顔だけで、性格はとんでもないようだ。

「おや、心外ですね。皆さんはともかく、鬼の副長まで何を仰るんです?」
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