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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第5章 戦火【土方歳三編】


どのぐらい経ったのだろう。
太陽は既に傾き、夕日の茜色が空を染め上げていて眩しく感じた。

「む……もうこんな時間か」

集中し過ぎて、時間がこんなにも経っているの気付かなかった。
そして集中が切れたせいなのか、私は突然身体が重く感じてその場に崩れ落ちそうになる。

斎藤さんもそうだが、近藤さんの稽古もなかなか厳しいものだった。
息切れしながら、何とか息を吸って乱れた呼吸を整えながら挨拶をする。

「あ、ありがとう……ございました……」

腕は痺れて、足が悲鳴を上げて震えてしまう。
汗が吹き出し、顎から汗が伝って地面に落ちていくのが見えた。

満身創痍の私を見ると、近藤さんはすぐに慌てた表情へと変わる。
そして直ぐに私へと頭を下げてきた。

「す、すまなかった千尋君!俺としたことが、ついつい熱が入ってかなり無茶な練習を……!!」
「い、いえ、大丈夫です……斎藤さんの稽古で、このぐらい慣れていますので……。それに、門弟ではない私に、手を抜かずに真剣に指導をしてくださりありがとうございます」
「そ、そうか……そう言ってもらえると、少しは救われる気がするよ」

近藤さんは安堵したように微笑んだ。
その笑みに釣られるように、私もつい微笑んでしまう。

「しかし、斎藤君が言ってた通り、君は覚えがとても早いのだな。女子なのに、剣の腕前は本当に申し分ない。そのせいなのか、つい昔を思い出して、厳しくしてしまったよ」
「昔って……江戸に居られた時ですか?」
「その通り。俺とトシ、総司に源さんは試衛館という道場で天然理心流を学んでいてね。それ以外に、山南君、藤堂君、永倉君、原田君が転がり込んでいたよ。そういえば斎藤君も顔を出していたなあ……」
「あ、斎藤さんにお聞きしました。試衛館道場で、近藤さんは道場主をされていたって」
「ああ、そうなんだ。今は機会が減ったが、あの頃はよく互いに手合わせもしたものだ」

近藤さんは懐かしそうに笑っていた。
そして、斎藤さんから話を聞かせてもらったが、近藤さんは農家の生まれだったけれども、天然理心流の道場主に才能を見出され、その方の養子になられたと。

試衛館で腕を磨いてる時に、土方さんや沖田さんや今の仲間と出会った。
斎藤さんは、懐かしそうに稽古の休憩中に話を聞かせてくれた。

「……きっと、昔から厳しい稽古だったんでしょうね」
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