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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第5章 戦火【土方歳三編】


最初は千鶴をただ守りたいだけで、斎藤さんから剣術の稽古をつけてもらっていた。
だけど、池田屋の時や禁門の変などで間近で戦というのを感じてきた。
その際に、千鶴を守るだけじゃなくて、新選組の方々に迷惑をかけないようにする為にも強くなりたいと思ったのだ。

(でも、やっぱり駄目かな……)

そう思っていれば、近藤さんは暫く考えていたけれど頷いてくれた。

「……あいわかった!そこまでの熱意を持っているなら、俺も喜んで稽古に付き合おう!」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ!」

その後、近藤さんは二本の竹刀を持ってきてくれた。
斎藤さんの稽古では木刀を使用しているが、近藤さんは私を気遣って竹刀にしてくれたみたい。

稽古の邪魔にならないよう、袖は適当な紐でたすきがけを作った。
そして、私は竹刀を体が強ばらない程度に強く握りしめる。

「では早速始めるとしよう。……先に言っておくが、天然理心流は少々荒っぽいぞ」
「はい!お願いします!」
「うむ、ならばまず構えから見よう。確か、千尋君は伊庭道場で心形刀流を習っていたんだったな?」
「はい」
「ならば身についた型を崩すことはない。心形刀流の流派の型で構えてみてくれ」
「わかりました」

伊庭道場で習った通りで、私は見えない敵を見据えるかのような竹刀を握り直す。

「うむ、握りは上出来だ。だか、少し握りが甘い!」
「はい!」
「斎藤君からも教えられたかもしれんが、正面から斬り合いになったとき真っ先に間合いに入るのは刀であり、刀を持つ手でもある。握りが甘ければ、その時点で容易に刀を落とされてしまう。これは気をつけねばならん」
「はい!」

近藤さんは斎藤さん同様、私が女子だからと言って手を脱がずに指導をしてくれた。
それが、私にとっては凄く有難い。

「ああ、君は覚えが早いな。だが、君の場合腕力の問題で、敵の斬撃を正面から受け取るのは避けるべきだ。となると自然、斬撃を受け流す形になる」

近藤さんと斎藤さんの稽古は少し違った。
斎藤さんは、相手を攻撃する仕方について教えてくれるが近藤さんは相手の斬撃をどう受け流すか、私の腕力について考えて指導をしてくれる。

二人の指導は違うが、二人の指導は私にとってはとても為になるものばかり。
これを覚えれば、多少は戦場で敵と遭遇しても直ぐに殺される事はないかもしれない。
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