第5章 戦火【土方歳三編】
原田さんは私と相馬さんの様子を見て、涙が出るほど大笑いをしていて、千鶴は慌てて私を止めていた。
それから、相馬さんはわけも分からないと言わんばかりの表情をしながら謝罪を述べるのであった。
その後、相馬さんは何かと新選組について尋ねてくる。
数刻すると、新選組の話を聞いてから、何かやる気が出たのか爽やかに手を振りながら去っていった。
「あの人、私達の事、本当に男だと思っていましたね……」
「直接触りゃ気付きそうなもんだが、平助や新八並に鈍いって言うか……」
「切ればよかった……」
「千尋、駄目だからね!?」
「本当に、千尋は千鶴の事になると物騒になるなあ」
次、千鶴に対してあんな風に触ったら切ろうかな。
私はそう思いながら去っていく背中を、少しだけ睨むのであった。
平助君が江戸に経ってから一ヶ月。
明日には近藤さんも京を出て、平助君がいる江戸へと向かう。
そんな近藤さんを中庭で見つけたのは、ちょうどそんな日の昼下がりだった。
「近藤さん、こんにちは」
「む?……ああ、千尋君か。どうかしたのかい?」
「特に用はないのですが、近藤さんの姿を見つけたのでつい……。そういえば、近藤さんは明日には江戸に向かうんですよね」
「ああ、その通りだ。平助をあまり待たせるわけにもいかんからな」
平助君のときもそうだったけれど、近藤さんが留守にするというのも寂しく感じる。
「……明日から近藤さんが留守となると、寂しくなりますね」
「なに、留守はトシに任せてあるし、いないと言ってもほんの一月程度だよ」
「でも、一月だとしても寂しいです」
それに、屯所中では近藤さんと井上さんが私にとっては安心出来る存在。
だから、そんな近藤さんが居なくなってしまうのは寂しくなってしまう。
私が寂しく感じているのが、表情に出てしまったのだろう。
近藤さんは困ったような顔をしていた。
「……そうだ、せっかく江戸に行くわけだし、何か土産でも買ってこようじゃないか。君も故郷が懐かしかろう」
「え、いえ!そんな気遣ってもらわなくても大丈夫ですよ!」
「そうか?君には、トシに関しても世話になっているからなぁ……。聞いたぞ、昨夜も夕餉を食べなかったトシの部屋に行っておにぎりを口に突っ込んだらしいじゃないか」
「あ、あは、あははは……」