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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第5章 戦火【土方歳三編】


私達は別に武士を目指しているわけじゃない。
なので、相馬さんの言葉に困っていれば、千鶴は思わずと言わんばかりの返事をした。

「え……あ……はい、が、頑張りましょう」

相馬さんがあまりにも真っ直ぐな目をしているものだから、返答に困ってしまう。
そう思いながら、私は相馬さんから目を逸らすと少しだけぬるくなってしまったお茶を飲んだ。

暫くすれば、先程まで私たちの様子を何も言わずに見ていた原田さんが可笑しそうに笑い出す。

「ははっ、よかったな千鶴に千尋。立派な武士を目指す仲間ができて」
「……原田さん……。そんなに笑わなくてもいいと思います」
「そうですよ、原田さん……」
「ま、頑張るのはいいことだが、千尋はともかく千鶴は剣術以外の分野をしておけよ。どうしたってこいうのは向き不向きってもんがあるからな」
「はい、わかっています」

確かに、千鶴は私より剣術ができない。
その事を少し気にしている所があるけれど、原田さんの言う通り、向き不向きがある。
それに千鶴は剣術は不向きでも、料理や掃除に縫い物が得意。

「……雪村さんは、剣術が苦手なのか?」

相馬さんが千鶴を見ながらそう言うと、何故か突然手を伸ばして千鶴の肩を掴んだ。
そして何故か、千鶴の体を触り始める。

「はっ!?」
「……なるほど。肩や腕の筋肉がまったく足りていないな。細くて柔らかくて……。これではまるで女子の様だぞ」
「そ、相馬さん……?」

千鶴の肩や手をやわやわと掴むように触る相馬さんに、私は目を見開かせた。
目の前で、男が千鶴を無闇矢鱈と触っている事にわなわなと体が震える。

これは、斬っていいのかな、父様……斎藤さん。
私はそう思いながら、手が少しづつ刀の柄へと伸びていく。

「小姓といえど新選組の一人なのだから、刀を抜くときも来るだろう。やはり雪村さんは、もう少し身体を鍛えたほうがいいと思うな」
「……は、はい、努力します……」
「相馬、その辺にしとけ。妹……じゃないな、弟が刀を抜きそうだから」

原田さんが笑いながらそう言うと、相馬さんは不思議そうな表情をしていたが、私を見るなりぎょっとした表情へと変わった。

「な、なんで弟の方の雪村さんは刀を手にしてるんだ!?」
「そろそろ、兄から手を離していただけますか、相馬さん……。斬りますよ」
「だから、なぜ!?」
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