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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第5章 戦火【土方歳三編】


「おまえが俺たちを見て、どう感じたのかは知らねえが……新選組といってもいろんな奴がいる。みんながみんな、そんな高い志を持っているわけじゃない。刀や槍働きでしか生きていけない奴、浪人で食うに困っている奴、どうしても金が必要って奴とかな」

原田さんはまたお茶を啜りながら、小さく笑いなが私達の方へと視線を向けてきた。

「中にはそろばんしかできない奴、こいつ等みたいに小姓をしてる者もいるしな」
「わ、私達ですか?」

突然、原田さんに言われて千鶴は戸惑った表情を浮かべていた。
そして私も戸惑いながらも、確かに小姓だからなあと思いながらお茶を口にする。

一応、私と千鶴は土方さんの小姓。
だからまちがいではないけれども、それは名目上であり本当の小姓じゃないから複雑な気分……。

「ちょっとわけありで預かっているが、こう見えても土方さんの小姓たちだぜ。そんなわけで、別にすごい志やら武士道やら、そんなもんを持ってる奴ばかりじゃねえ。だが、強者揃いなのは保障するぜ。前に向かって剣を振るい、敵に背を見せず……そういう男たちの集まりさ」
「あんたたちの中にも、事情や立場がそれぞれあるのはわかる……。だが、この京での働きに、強い志を持っているのは確かだと思う。俺は……そんな、あんたたちがうらやましい……」

相馬さんは言葉を切ると、居ずまいを正して私達を見据えてきた。

「原田さん……雪村さんたち。俺は武士として、恥ずかしくない態度をとれる人間になりたい。例え避難されようと、後ろ指を指されようとも、真っ直ぐにそれを貫けるような。いつかは皆さんと同じような、立派な武士になりたいと思います!」
「なんだなんだ、突然ずいぶんな殊勝な態度になったな」
「いえ。今まで俺は何もわかっていなかった。……原田さん、俺を許してください」
「なに言ってやがる。別に、許すも許さねえもねえよ、気にするな」

原田さんへと謝罪を述べた相馬さんは、次は何故か私と千鶴の方へと向き直って頭を下げてきた。
それにぎょっとすると、相馬さんは頭を勢いよくあげる。

「雪村さん達も、土方さんの小姓であれば新選組で武士のなんたるかを学び、修練しているとお見受けした」
「……え?」
「え、いや…あの……」
「互いに軽輩者同士。立派な武士を目指して、共に頑張ろうではないですか!」
「いや、別に……私たちは……」
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