第5章 戦火【土方歳三編】
「俺が新選組の巡察に……?」
「いいんですか、原田さん?」
「相馬さんは、新選組の方では無いのに大丈夫なのですか……?」
「京の様子を見に来たんだろ?ちょうどいいじゃねえか。新選組の様子を確認した、っていえば藩としても損はねえはずだ」
原田さんの言葉に、相馬さんは考えると数回頷いて見せた。
そして納得したという表情をしながら、原田さんへと向き直る。
「……わかった。興味もあるし付き合ってみる」
そうして、相馬さんも巡察に同行することになり、私たち四人は足早で先に行っている隊士さんたちの後を追った。
指示を出すため、原田さんは列の先頭へと向かったのでその背中を見送る。
原田さんが居なくなったので、私と千鶴に相馬さんは巡察の最後尾について歩いていく。
相馬さんは、最後尾で歩きながら町の様子を見ていた。
(相馬さんか……また会うなんて思っていなかったなあ)
暫くして、相馬さんが巡察をじっと観察しながらため息と共に声を漏らしていた。
「新選組は浪士崩れの乱暴者ばかりと、江戸で聞かれたが……ずいぶんと規律が取れているんだな。俺が思っていたのとは大違いだ」
「私たちも新選組を知った当初は、そう思っていたこともありました」
「でも、新選組の巡察に同行するようになってからはそうじゃないって分かりました。それに、民に無体な真似をした者は厳しく罰せられるらしいので」
「そうか……。これが新選組の本当の姿なのか……」
そう呟いて、相馬さんは隊士さんの後ろ姿を見ていた。
そんな時、原田さんがある茶店の前で何かを見つけたのか声を上げる。
「ーーおい!そこの浪士ども!天下の往来で何してんだ?何か問題があるなら、新選組で聞いてやるぜ?」
どうしたのだろうと、原田さんの方を見れば、複数の浪士達が店先で何か問題を起こしているようだ。
「新選組だと?関係ねえだろ、すっこんでろ!」
「そうだそうだ。俺たちは、この店の客だぜ」
「ほう……客にしちゃ、ずいぶんともめているみたいだったがな。店主、こいつ等が言ったことは本当か?」
「それはその……この方たちはお客様で……」
「ほらみろ、言った通りだろ。壬生浪なんざお呼びじゃねえんだ」
「俺たちはな、大事な国事のために店で飲み食いしてやってるんだ。店もありがたがってるんだぜ」