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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第5章 戦火【土方歳三編】


「ああ、おかげさまで」

彼の名前は相馬主計。
確か、数ヶ月前の私と千鶴が初めて屯所の外に出た際に千鶴達が偶然知り合ったお若いお侍さん。
あの不思議な錦絵を持っていて、山南さんに取り上げられていたのを覚えている。

「相馬さんも、また京に来ていたんですか?」
「つい先日、藩から戦の後の様子を見てこいと言われて来たんだ。そっちは……もしかして巡察の最中か?」
「ああ、見ての通りだ」

原田さんの返事に促された相馬さんは、先を歩いている隊士の方々の後ろ姿を見つめていた。

「……巡察、か」
「なんだ?複雑そうだな」
「いや、初めて出会ったときも、新選組が巡察してる途中だったので、それを思い出して」
「そういやそうだったか。あの時は手荒なことをして悪かったな」
「……あんな風に局長自ら謝られたら許すしかないだろう。まったく……ああもためいらもなく、下の者に頭を下げるなんて聞いたことがない」

私も聞いたことがないので苦笑を浮かべる。
上の者が下の者に頭を下げるというのは、なかなか無い事だから近藤さんのような方は珍しい。

「悪いと思ったら素直に謝る。……うちの大将はそういう人なんだよ」
「誰にでもできることじゃありませんよね」
「だからこそ、近藤さんは色んな方に慕われているんでしょうね」

私と千鶴が口を挟むと、原田さんも相馬さんも軽く相好を崩してくれた。

「……というか、あの時は気づかなかったが、皆、ちゃんと見回りしているんだな」
「おい、そりゃどういう意味だ?普段はやっていないような言い方に聞こえるぜ」
「あ、いや、前にも言ったように江戸では新選組の悪い印象を聞いていたし、前回の印象が悪かったから。新選組の見回りって、もっと荒っぽいもんだと思ってたんだ」

相馬さんの言葉に否定できなかった。
だって私も、新選組の方々と出会う前は悪い印象を聞いていたし、出会い方も最悪だったので印象が悪かったのだから。

原田さんは相馬さんの言葉に怒るわけでもなく、ただ苦笑いを浮かべていた。

「声を張り上げて、周りを威嚇しながらふんぞり返って歩いてるとでも思ったか?」
「……否定はしない」

相馬さんがそう言うと、原田さんはなんだか暫く考えてから口に出した。

「……だったら巡察に付き合ってみるか?そうすりゃ、俺たちがこの京で何をしてるかわかると思うぜ」
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