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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第5章 戦火【土方歳三編】


「平助君も気をつけて!江戸への道中も暑いと思うし、ちゃんと水分を取ってね」
「少しでも体調が悪いと思ったら、無理せずに休んでね!」

こちらに手を振りながら遠ざかっていく平助君の姿を見ると、一抹の寂しさが胸をよぎってしまう。
今まで平助君はずっといたから、暫く居ないのはやはり寂しい。

そして、ふと近藤さんを見ればなんだか嬉しそうにしていた。
千鶴もそれに気が付いたのか、近藤さんに問いかけている。

「近藤さん、なんだかうれしそうですね。新しい隊士の事を考えているんですか?」
「ああ。やはり隊士がふえるのはうれしいものだ。それが有能な人材なら尚更だよ」

にこにこと嬉しげに笑う近藤さんを見て、つい私まで釣られて笑ってしまう。
きっと、近藤さんは新選組の未来を案じているからこそ喜んでいるのだろう。

それから、原田さんが私たちに声をかけてくれて私たちは彼の巡察に同行する事となった。
禁門の変以降は、私も千鶴も幹部の方が忙しいからとなかなか巡察に同行出来ていなかったので、久しぶりに京の町を目にする。

「町の人たちも皆、平和そうで……。一月前にあんな大きな戦があったとは思えませんね」
「それに、火事で焼け落ちてたところも復旧してるみたいですし……」
「そういや、おまえらには総司や平助の面倒を任せてたから、外に出るのは久しぶりだったよな。京の町は戦慣れしてるってことか、事件の翌日にはもうこんな様子だったぜ」

原田さんの言葉に思わず目を見張りながらも、私は町の様子を見ながら歩いていく。
戦に慣れるというのは、あまり良くない気がするけれども、京の人にとっては慣れたものなんだろう……。

「あれ……?あの人……」

町の様子を見ながら歩いていると、千鶴が声をあげた。
どうしたのだろうと、千鶴が視線を向けている方に視線を持っていく。
そして原田さんは少し驚いた表情をしながら、千鶴に声をかけた。

「どうした?もしかして綱道さんか?」
「どうしたの、千鶴?」
「いえ、父ではないんですが、原田さんも千尋もご存知の人です」
「……知ってる人?」

千鶴の言葉に私や原田さんが立ち止まると、千鶴の視線の先にいた人が目の前まで近づいてきた。

「あ……あんたたちは新選組の……」
「あ、相馬さん……でしたっけ」
「……おまえは相馬だったな。久しぶりだが、元気だったか?」
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