• テキストサイズ

君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第5章 戦火【土方歳三編】


「……そろそろ、日が暮れますね」

私と千鶴は今、天王山のふもとにいる。
永倉さんは多くの隊士の方々を連れて、長州の浪士達を追って山を登って行った。

敵を山を降りてきた場合に備えて、永倉さんは私と千鶴を含めた数人の隊士の方々をふもとで待機させていた。
その中には島田さんもいて、千鶴の言葉に優しく返事をする。

「……大丈夫ですよ。そろそろ戻って来ると思います」
「わかっています。でも……」
「永倉さん達の事もそうですが、土方さんも……」

永倉さん達も心配だけど、一人であの男を相手にしていた土方さんの事も心配だった。

「大丈夫、だよね……あの人の事だから」

きっと、土方さんも永倉さんも大丈夫。
そう、自分に言い聞かせるように呟いていれば道の先に人の影がある事に気が付いた。

「……あ!」

その人は私たちの姿を見つけると、なんとも言えない表情をしながらこちらへと向かってきた。

「土方さん……!」
「……良かった、ご無事だったんですね」

土方さんの姿を見て、とても安堵してしまった。
怪我をしている様子も無ようで、それに対してほっ…と息を吐いていれば、島田さんが土方さんへと駆け寄る。
だけど、なんだか土方さんは不機嫌そうだった。

「ご無事でしたか、副長。……怪我もないようで何よりです」
「土方さん、あの……なんだか不機嫌ですね」
「まあな。せめて一太刀浴びせたかったんだが、途中で薩摩藩の横槍が入りやがった」
「薩摩藩の横槍ですか?」
「ああ。奴は、風間……風間千景とか言っていた。薩摩の手の者らしい」
「薩摩藩の……?」

土方さんの呟いた名前に、私は少しだけ目を見開かせた。
その【風間】という苗字には聞き覚えがあり、もしかしてと眉間に皺を寄せながら考え込む。

(風間……風間って、もしかしてあの【風間家】の事なのだろうか……)

そう思いながらも、何故彼が薩摩藩の関係者なら新選組へと攻撃をしたのかと謎に思えた。
薩摩藩は今回、会津藩に協力していたはずなのに。

「薩摩藩は、会津藩に協力していたんですよね。なら、何故あの男は新選組の邪魔をして……長州の浪士を追い掛けるのを良しとしなかったのでしょうか?」

なんとも違和感のある、あの男の行動に眉を寄せながら呟けば千鶴も島田さんも眉を寄せながら違和感を感じている様子だった。
/ 768ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp