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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第5章 戦火【土方歳三編】


しかも、薩摩藩は英国に戦争を挑んで呆気なく負け戦となった。
負け戦により何かを思い知ったのか、その後は幕府に協力的になったとか色々言われている。

「土方さん!公家御門のほうには、まだ長州の奴らが残ってるらしいぜ」

走って知らせてきた原田さんの一報に、土方さんは少しだけ表情を変える。
すると、続いて山崎さんが駆け込んできた。

「副長。今回の御所襲撃の中心人物らが、天王山に撤退しているそうです」

天王山は、京と大阪の間にある山の名前。
山崎さんによると、伏見から大阪に向かって逃げている途中とのこと。

二人の報告を聞いた土方さんは、静かに眉を寄せた。
大局で新選組の動きを考えるのは、どうやら土方さんの仕事らしい。
新選組の方々も、自然と土方さんを頼り、近藤さんもそれが当然といった表情をしている。

今、この場にいる全ての新選組隊士の方々が、土方さんの発言を待っている。
そして、土方さんは思案を続けていたが不意に淡く笑みを浮かべた。

「……てめえら、今から忙しくなるぞ。原田。隊を率いて公家御門へ向かい、長州の残党ども追い返せ!」
「あいよ!」
「斎藤と山崎は状況の確認を頼む。当初の予定通り、この蛤御門の守備に当たれ」
「承知!」
「はいっ!」
「それから大将、あんたには大仕事がある。手間だろうが、会津の上層部に掛け合って追討の許可をもらってきてくれ」
「長州の追討だな?」
「天王山に向かった奴ら以外にも敗残兵はいる。商家に推し借りしながら落ち延びるんだろうよ。追討するなら、俺らも京を離れることになる。その許可をもらいに行けるのは、あんただけだ」

新選組の勤めは京の守護。
そして、今回の戦は会津藩の助太刀であり、この門の守護の筈。
にもかかわらず、新選組がここを離れて落ち延びてゆく長州兵を追うには、京都守護職である会津藩の許可が必要。

「なるほどな。局長である俺が行けば、きっと守護職も取り合ってくれるだろう」

でも、それはきっと容易な話では無い気がする。
昨日の所司代の時や、九条河原での件のことを考えれば益々、簡単な話じゃない。

だからと言って、新選組局長である近藤さん以外だと追討の許可以前に話を聞いてもらえることさえ叶わないはず。
その事を考えれば、追討の許可を貰いに行くのは近藤さんが適任なんだろう。
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