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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第5章 戦火【土方歳三編】


「刀を、抜く……」

覚悟をしなければ。
そう思いながら後ろを振り向ければ、戦の音や動き出した新選組に狼狽えていた会津藩の予備部隊も、土方さんの一喝で目が覚めたらしい。
結局、彼ら予備部隊も蛤御門まで、新選組の後をついてきたのだった。

しかし、私たちが蛤御門に辿り着いたときーー。
蛤御門は無惨な姿となっていて、その姿に思わず顔を顰めてしまう。

「これは……」
「……あちこちが、壊れてる」

蛤御門には金属の弾を打ち込まれた痕跡、そして刀傷があちこちに刻まれている痕がある。
御門の周囲には負傷者も倒れていて、辺りには焼けたような焦げた独特な臭いまで漂っていた。

池田屋の時とはまた違う、光景に息を飲む。
そして、辺りに倒れている負傷者からは血が流れているのを見て思わず目を背けた。

(そういえば、戦があった痕跡はあるけど……)

ここには既に、敵の姿はない。
つまり、ここでの戦闘は終わっているということ。
すると土方さんは、数人の隊士の方に情報を集めるように指示をすれば、隊士さんたちは散開した。

「しかし……。天子様の御所に討ち入るなど、長州は一体何を考えているんだ」

近藤さんは蛤御門の惨状を見ながら、大きなため息を吐いた。

「やってることが、よくわからんねえ。長州は尊王派のはずなんだがなあ」

井上さんも同調して首を傾げる。
確かに、天皇を何より敬う筈の尊王派を掲げる長州が、なぜ天皇が住まわれている御所を襲撃するのか。
不可思議でしかない。

長州の動きに疑問を抱いていれば、情報を得たらしい斎藤さんが戻ってきた。

「夜中から朝方にかけて蛤御門へ押しかけた長州勢は、会津と薩摩の兵力により退けられた模様」
「薩摩……」

すると土方さんは皮肉げな笑みを漏らした。

「薩摩が会津の手助けか……。世の中、変われば変わるもんだな。あんなに仲が悪かったずなのにな……いや、長州が共通の敵となっただけか」

確か、薩摩藩はもともと会津藩や徳川親藩と親しい愛柄ではない。
親しい愛柄ではなく、徳川を出し抜いて朝廷に擦り寄り海外勢力を打ち払おうとしていたはず。

海外勢力を打ち払おうとする薩摩藩、それを良しとしない会津藩。
相容れない存在同士だろうに……。

(薩摩藩のやっている事は長州と同じ。昔、父様や通っていた道場の人たちにそう、聞いたけど…)
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