第5章 戦火【土方歳三編】
斎藤さんが私と千鶴をそう評価してくれていたなんて、嬉しくてたまらなかった。
それに私の剣術の腕を認めてくれている事が、何よりも嬉しくてたまらない。
「よし、わかった!君たちの参加に関しては俺が全責任を持とう。もちろん同行を希望するのであれば、だが」
「私たちは……」
千鶴とお互いの顔を見合う。
私は元々、千鶴が【参加する】と言うなら着いていくことを決めている。
なので千鶴を見ながら口を開いた。
「私は、千鶴が行くなら同行するつもりだよ。だから、千鶴はどうしたい?」
そう聞けば、千鶴は少し戸惑ったような表情をしていて、まるで救いを求めるように視線を彷徨わせていた。
すると、千鶴の様子を見かねた沖田さんが助け舟を出す。
「戦場に行くんだってわかってるなら、後は君の好きにすればいいと思うよ。それに、君が危険になればそこの過保護な千尋ちゃんが守ってくれるだろうし。ね?」
「当たり前です。千鶴を守るのは、幼い頃から私の役目ですから」
すると、沖田さんの言葉で決意したのか悩んでいた千鶴の表情が変わった。
そして小さく頷く。
「私は、皆さんと一緒に参加したいです」
「では、私も参加します」
そして、私たちは大急ぎで支度を済ませると伏見奉行所まで向かい辿り着いた。
この奉行所では、長州との戦いに備えて京都所司代の方々が集まっているらしい。
隊の先頭に立っていた近藤さんは、何時の優しい表情を消していた。
そして門の前に立つ役人の方に近づき、声をかける。
「会津藩中将松平容保様お預かり、新選組。京都守護職の要請により馳せ参じ申した!」
会津藩主、松平容保様。
彼は会津藩主でもあり、京都守護職の長でもあるとても偉いお方だ。
だが、役人の方は新選組の名を聞くといぶかしがるように眉を寄せるだけ。
「要請だと……?そのような連絡は届いておらん」
「……え?」
「……どうして?」
私と千鶴の漏らした呟きが聞こえたようで、斎藤さんは吐息と共に小声をこぼす。
「内輪の情報伝達さえままならんとは、戦況に余程の混迷があると見える」
「長州に、幕府側が押されている。そういう事ですか……?」
「そうとも限らん。……しかし、敵方に翻弄されてはいるのだろうな」
もしかしたら、幕府側が翻弄するほどの数で攻めてきているのかも。
そう思いながら眉間に皺を寄せた。